おしゃれハッカー

 個人情報を集めるために結城くんは利用された。
 このままだと結城くんはとんでもないことになっちゃうんじゃないかな。
 そんなことを考えていると、ふいに不気味な声が次々と工場から響いてきた。

「ヨクモ俺タチヲ棄テタナァ……」
 ええっ、なんだかぞろぞろと中古ロボットの大群がこっちに向かっているんですけれど!
「許セナイ……人間ニ復讐ヲ……」
「なんだこれは!」
 優海さんが叫んだ。
「暴走しているのかしらっ? これはスクープの臭いっ! なんて言っている場合じゃないか……」
 しばしの沈黙、わたしたちはあまりに敵が巨大すぎてどうしたらいいのかわからなった。本のデータを消すだけじゃなくて捨てられたロボットたちが悪さをはじめようとしている。こうなったら手が付けられないよ。百や二百なんて数じゃない。うじゃうじゃと工場から大群が押し寄せているんだもの。何千、何万だよ。これじゃあ今にもロボット対人間の戦争が起こりそうな勢いだよ。
「届けよう、この声を彼らに!」
 優海さんがわたしに手を差しだして言った。
「それってもしかして……」
「ショコラの三人で歌うってことでしょうっ!」
 風香ちゃんの言葉でわかったよ。そうか、いままではアカペラだったけれど、マジカルプログラムの楽器があればもっともっと力を出せるのかもしれない。わたしは手にしていた青い宝石を風香ちゃんに手渡した。
「いっくよー! ロジカルマジカル! ミュージック!! ……やったっ! あたしの楽器は電子キーボードなのねっ! あたし、ピアノは得意なんだよ!!」
 風香ちゃんの楽器はキーボードなんだ。さわやかな夏の海を思わせる青いサーフボードの形をしたキーボードが洋服ととっても似合っている。
「そうか……そういえば僕、ギターを弾けないな」
「だいじょうぶですよ、わたしだって上手に歌えないんですから。でも、できるはずです」
 いくら風香ちゃんが得意といってもピアノとバンドではまったく違う。常識で考えれば素人三人組のバンドがいきなり演奏なんてできるわけがない。だけれど、これはマジカルプログラムなんだ。
 大きく深呼吸。もともと引っ込み思案の地味な女の子がいきなり大胆にはなれないよ。鼓動がはやくなって、少し息苦しい。おまけに手からは汗がでるし、背筋もひんやりする。
 めちゃくちゃ緊張していることが自分でも嫌っていうくらいはっきりとわかった。救いは歌い始めてしまえばマジカルプログラムがあとはなんとかしてくれるってこと。
 アイドルや歌手はこんな緊張と毎日たたかって、最高のパフォーマンスを出しているんだね。
「何度でも言うよ、僕らがついているから!」
 優海さんがわたしのことをまた励ましてくれた。
「はい……緊張してるんですが……その、みんなと歌えることが嬉しいんです!」
「愛花ちゃんは周りに気をつかうタイプだからねっ! 本当の気持ちをぶつけてごらんよっ! なーに、あたしだって緊張してるんだから、へーき、へーきっ!」
 風香ちゃんもわたしのことを励ましてくれる。キーボードを持つ手が震えているのにな。
「そうだ! ところで、提案があるのですがいいですか?」
「どうしたの?」
 優海さんが心配そうに訊ねる。
「変な話じゃないんです。解決したらみんなとやりたいことができたんです!」「愛花ちゃんのやりたいことか、スクープの臭いがするわねっ!」
「僕も聞きたいな。よし、そのためにもがんばろう!」