おしゃれハッカー

「本のお城? 愛花ちゃん、どういうこと?」
「この事件を解くキーワードは『良いことをするとポイントが貯まる』、そしてその商品に『廃校舎』があったことが関係しています。学級委員としてがんばり、部活も勉強も努力した、そして最近では漫画賞も受賞した……」

 この先の言葉はできればいいたくない。嫌いなやつだけど……。

「犯人は結城翔くん、あなたですね! あなたは良いことポイント、通称ぐっぴーを集めて廃校になった学校を丸ごと手に入れ、そこを理想の本屋さんにして営業を始める予定だった。そのために、小学生になってからはずっと、人の何倍も努力してきたんですね」
 わたしの推理に風香ちゃんは目を丸くした。
「学校丸ごと本屋さんにしちゃうの!? なんだかめちゃくちゃだけど……面白いアイデアねっ! スクープの臭いがするわっ!」
「そうだね。確かに普通に本屋さんをしていたら、生き残ることは難しい時代だからね。エクセレントな発想だと思うよ」
 優海さんも感心している。

「ソウダ、今ニモ家ノ本屋は潰レソウダッタ。少シデモ時間ガ必要ダッタノダ。ダガ、モウ遅イ……親父タチハ諦メテイル……ソレニ、俺モ、モウ終ワリダ……ワカッテイタ……コンナ素人ノ技術、バレナイハズガナイ。ナア、モシカシテ、君ノ名ハ……」
 まるでどこかの映画みたいなセリフね。
「そう、四色愛花よっ!」
「ワカッタ、自首スル」
 つかんでいたロボットの力が弱くなったのか、風香ちゃんは台車から飛び降りる。
「その必要はないわ。あたしたちは正義の味方なんかじゃないし、警察でもないからねっ!」
「……そうだね」
 優海さんも頷いた。
「わたしたちはハッカーチーム『ショコラ』だもん! 何が正しいかは自分たちで決める!」

 観念したロボットに海のように青い雫が輝いている。まるで涙が宝石になったみたい。
「解決……ですかね」
 わたしの手の中で輝く宝石。これで三つ目だ。事件は解決したはずなのに、なんだろう、嫌な予感がする。
「らにちゃん、空は変わらないよ」
 宝石を手に入れたら空が見慣れた青空、いや、時間的に夕焼け空に変わるはずなのに。

「やっぱりね、僕は今回の事件はおかしな点があると思っていたんだ、よほどの腕利きでなければ大企業をハッキングなんてできるわけがない。むしろ、モノスバルはわざと鍵を開けやすくしていたんじゃないかな」
「なんでそんなことをするの?」
「愛花ちゃん、真犯人はすべての罪を結城くんに押し付けようとしているだけなんじゃないのかな」
 優海さんの説明でようやくわかった。それなら、結城くんが自首する必要はない。だから警察の優海さんも自首しなくていいと言っていたんだね。結城くんは利用されただけなのだから。
「きっと、もっと悪いことに個人情報を利用しようとしているのかもしれない」
 優海さんは個人情報の悪用っていうけれど、それってどういうものなのかイマイチわからない。
「個人情報って、何に利用するんですか?」
「個人のパソコンを乗っ取って、そこから犯罪に利用するんだよっ! それに、名前や年齢や性別はもちろん、住所や電話番号、学校や職場の情報、年収、貯金なんでも流出しちゃうんだからっ!」
 風香ちゃんの説明を聞いてぞっとした。パソコンが乗っ取られて犯罪に利用される? それって防げないのかな?
「やっかいなことに、犯人を捕まえることは難しい……それに、犯罪と関わりがなかったとしても警察に一度疑われたら無実を証明することはとても難しいんだよ。なんとかしようって動きはあるんだけれどね。過去には無実の人が警察に捕まったなんて事件も実際にあったんだよ。無実だと証明できたからいいけれど、必ず証明できるわけじゃないからね」
 さすが警察官の優海さん。過去の事件にも詳しい。
 それにしても、ロボットだけでなく無実の人間にまで罪をなすりつけるの!?
 酷すぎるよ! ふと、何も悪いことをしていないのにネットでいじめられていたことを思い出した。すごく辛い。
 みんなネットの嘘を信じて本当のわたしを信じてくれない。そんなやり場のない怒りって、とっても本当にとっても辛いんだ。
「こんな時こそおしゃれハッカーの出番じゃない!!」