おしゃれハッカー

「それじゃあ、僕らはこれを身に着けていれば中に入れるんだね。愛花ちゃん、無くさないようにね」
「もう、無くしませんよ~」
 やっぱり、中学生から見たら小学生って子供だもんね。わたしって頼りなく見えるのかな。
「あ、そうだ、らにちゃんが言うには、この宝石が武器になるんですって」
 わたしがポケットから取り出した宝石に二人とも釘付けだった。キラキラした宝石が嫌いな女の子なんていないんじゃないかな。
「これはコンピューターウィルスをマジカルハッキングで封じこめたものなんだらに」
「今は二つだけど、今回の事件を解決したら三つ目が手に入るんだ! 嬉しいねっ! なんだか俄然やる気が出てきたよっ!」
 風香ちゃんの言う気持ちはわかるよ! 実はわたしも三つ目の宝石が楽しみなんだ!

 昨日と同じようにモノレールに乗ってモノスバル本社に行くと、今日は大勢の記者さんが押しよせていた。
「なんであんなに大人がいるの?」
「自分が買ったものをみんなに知られたくないんだよ」
 わたしの素朴な疑問に優海さんは丁寧に答えてくれる。そういうものはよくわからない。
 けど、男子はスケベだからエッチな本とかを買っているのがばれたら恥ずかしいかもしれないな。
 待てよ、もしかしたら優海さんがどんな本を買っているのかわかるのかもっ! それって、ちょっと知りたい……って、ダメだよね。プライバシーの侵害ってやつだ。
「ねぇ、優海さんはバレたら困るものとか買ってないのかなっ?」
 ふ、風香ちゃん、ダメだけどナイスっ! わたしも知りたいよ!
「え、そうだな、六法全書とか、ちょっと恥ずかしいかな……」
 ろ、六法全書!? 中学生でそんな勉強するの!?
「できるだけはやく弁護士資格が欲しいし、刑法は今の仕事で必要な知識だからね。できれば学生のうちに司法試験に合格したいし、でも、中学生にははやいかなって……」
 赤くなる優海さんはかわいいけれど、恥ずかしがることでもないと思うな。むしろカッコイイ!
「つまんな~いっ! 恋とかしないんですかっ!? スクープの臭いがしないですよっ!」
「そんなことを僕に言われてもな、恋はするものじゃなくて落ちるものだから」
「その点、愛花ちゃんは恋のスクープの臭いがするんだよねぇ」
 ど、どんな臭いですかっ!? まったく、風香ちゃんは裏表がなさすぎて困ります。
「おおっ! キミはこの前の警察官じゃないか! 女の子だったんだね」
 週刊ブルームの記者さんまで取材に来ていた。
「この前のもうひとりの女の子はいないのかな?」
 気づいてない……そーですよ、普段は地味でダサいですよ。
「いえ、今日はただの取材ですからいませんよ。僕とJSNの編集者だけです」
 表情を変えずにたんたんと受け答えをしている。こういうのをポーカーフェイスって言うけれど、わたしには真似できないな。
「それは残念だな。実はこの前の記事、海外で好評なんだ。あと経済新聞と子供向けの新聞も二人と会わせてくれなんて問い合わせがあったよ」
「なんだか難しい会話をしてるね」
 わたしが風香ちゃんにだけ聞こえるように言う。
「日本ではそういう変わったことをする人が少ないからよっ。いつまでたっても変化が少ないというか、内向きというか……高齢化が進んでいるから社会が停滞しているのねっ」
 しまった、風香ちゃんも天才だった。
「らにちゃん、ていたい、ってなに?」
「この場合は、順調に進まない、みたいな意味なんじゃないからに」
 うーん、つまり便秘みたいなものかな。