おしゃれハッカー

 風香ちゃんはちょっと変わったところがあるけれど、風雲児みたいな、底の見えないキラキラした特別を持っている。頭が良くて運動も得意。おまけにスタイル抜群でお金持ち。しかも二世タレントなんかと違って自分の力で成功している。
 ここまでくると妬む子は誰もいない。無敵だ。強いだけじゃなくて、敵をつくらない。
 太陽みたいな輝きに照らされてほっこりと心が丸くなって、優しい気持ちになってしまう。風香ちゃんと仕事をしてみたいと思う大人が現れるのも無理はないと思った。

 授業が終わった後、家に帰ってから自分の部屋に荷物を置くと、ランドセルの中かららにちゃんがはい出してきた。
「マナちゃん、宝石はまだ持っているらに?」
「え、引き出しに入っているけれど……それがどうかしたの?」
「あれはおしゃれハッカーの武器にもなるんだらに」
 へぇ、と紅あかと碧みどりの美しい宝石を夕陽にかざした。
「なんだかカッコイイね。歌だけでも無敵な感じがするけれど……」
「歌っている間、無防備になっちゃうらに。それに今回の相手は強敵かもしれないらによ」
 言われてみれば確かにそうだよね。わたしは宝石をハンカチでくるむと、そっとスカートのポケットにしのばせた。
 待ち合わせ場所の四葉駅前にある噴水ではすでに優海さんが待っていた。
「愛花ちゃん、僕、今日は制服だけどいいかな。学校が終わったばっかりでさ」
 制服姿の優海さんも素敵だな。姿勢が良いから四葉中学の品のある黒いセーラー服がさらに際立っている。服を着ているんじゃなくて、着こなしているんだ。
「あ、そうか。中学生は勉強も大変ですからね。毎日6時間目まであるとか信じられないです……」
「あははっ、もしかして愛花ちゃんは勉強が苦手なの? 僕でよければ教えてあげるよ」
 優海さんの裏表のない笑顔に、まさしく撃ち抜かれたかのような衝撃が胸に走る。そんな顔でわたしの瞳を見つめられたらドキドキして、りんごみたいに顔が赤くなっちゃうよ。
「あら、みんな、待たせてごめんねっ!」
 風香ちゃんはカメラのほかに四角いカードを首に下げて現れた。
「これが、JSN記者の身分証明書。といってもただの紙だけどね」
 わたしが渡された紙には記者の文字のとなりに『編集長代理』とシールが貼られていた。優海さんのカードには記者『仮(かり)』のシール。
「ありがとう、風香ちゃん。作るの大変だったでしょう?」
 優海さんがお礼をいいながら首にかけた。
「いやいや、あたしってさ、実はこういうちまちました作業が好きなんだよっ!」
 わたしもまねをして首から下げてみる。なんだか大人になった気分だよ。編集長代理か、なんかカッコイイな。