おしゃれハッカー

「し、知らないわ」
「ふーん、ま、あたしもそのことは詳しくは知らないんだけどさっ! あたしがプログラミングに興味をもったり、JSNをつくったりしたのは伝説のハッカーに憧れたからなんだよっ! WEBに投稿された伝説のハッカーは一説には1999年に魔王アンゴルモアの陰謀を阻止し、2000年問題というパソコンのトラブルを解決しただけでなく、コンピューターを使って悪さをする悪の組織をいくつも壊滅させたという! それはもう大大大スクープの連続っ!! もしかしたら、その人の子供はあたしと同じくらいの年齢の可能性もあるわねっ!」
 なんというか……ちょっと前のわたしなら絶対に信じていない。だけれど、おしゃれハッカーも力の使い方によっては、そんなはちゃめちゃなことができそうな気がする。
「わたし、いると思います……伝説のハッカー」
「あなた、スクープの臭いがするわねっ! ふふふ、そう、マジカルガールは実在したのよっ! みんな信じてくれないけれど、必ず見つけ出してみせるっ! まあ、他の惑星からやってきた宇宙人説、異世界人説、NASAが開発したロボット説、未来人説、妖怪説に突然変異の超能力者説もあるからちょっと怖いけれどねっ!」

 図書室に入ると低学年の子たちが一生懸命に絵本を読んでいる。
「あ、みてみて、愛花さんの考えた読書クイズ大会が上手くいってるのよ」
 司書の雪村先生が嬉しそうにわたしに声をかけてきた。図書委員の仕事は学校のみんなに読書の楽しさを知ってもらうこと。
 だから、こうして図書委員のみんなでアイデアを出し合っては定期的にイベントを行う。今回はクイズをだして、たくさん正解すると折り紙でつくったメダルがもらえるというものだ。
「お姉ちゃん図書委員なの?」
「あ、ヒカリちゃん! えらいね、本を読んでいるんだ」
「うん、この答えわかったよ、えーと、シャーロックホームズの作者の名前はコナン・ドイル!」
 ヒカリちゃんは2年生でホームズを読むのか……大人びているわね。
「正解! これで10問連続正解ね。はい、金メダル」
 賞品の入った箱からメダルを取り出すと、雪村先生はヒカリちゃんの首にメダルをかけてあげた。イベントの日はおしゃべりもおおめに見てくれるし、仕事は図書委員ではなく本を乗せる台車の形をしたロボットがしている。
「マナちゃん、授業が終わったなら遊びたいらに~」
 らにちゃんがランドセルから出てきてしまった。
「だめだよ、今は委員会のお仕事が……」
「それは!」
 風香ちゃんがらにちゃんを触ろうと手をのばした。
「え? なに? どうかしたの?」
「あたし、これと同じようなものをどこかで見たような気がする……うーん、ありふれているから思い出せないやっ!」
 まあ、らにちゃんのデザインって雪うさぎみたいだし、ありふれているからね。そもそも大福と間違えているのかもな。
「同じようなもの? って、そんなにびよーんとのばしたららにちゃんが痛がるよ!」
 風香ちゃんはらにちゃんを調べるためにぷにぷにボディを両手でのばそうとしていたから慌てて止めた。
「!? ええっ! 痛覚まであるの? なんでそんなセンサーが入っているのかしら? 普通のロボットは痛みや寒さ、熱さを感じないように作られているのにっ!」
「それは、友達になるためじゃないかな」
「ロボットと友達か……面白いじゃない!」
 風香ちゃんは素直な性格なのか、ゆっくりとらにちゃんと黒い表紙のスケッチブックを机の上に置いて本棚に向かっていった。何をしているのか見ていると、漫画の描き方、デッサン入門なんて本を手にとっている。
 それを見たわたしは思わずテンションが高くなってしまった。そう、わたしは漫画が大好きなのだ。
 絵の才能がないから描かないけれど、キラキラしたかわいい付録のたくさんついた少女漫画雑誌を毎月のおこづかいで買うのが楽しみなの。漫画の中には文学的な作品から、こんな設定がどうして思いついたのかって驚くような世界までたくさんある。イケメンとの恋に胸をときめかせたり、読んでいて泣いちゃうこともある。
「あの! もしかして風香ちゃんは漫画を描いたりするんですか?」
 わたしからこんなに積極的に話しかけることなんてほとんどない。わたしの周りでも漫画を読んでいる子はいたし、そういう子と漫画のお話しをすることもある、でも、自分も漫画を描こうってがんばっている人を見たのは初めてだった。