おしゃれハッカー

「どういうこと?」
「僕には捜査の指揮権はないんだよ。組織っていうのはそういうものなんだ……いや、僕が仲間からの信用が足らないからだね。僕みたいな中学生が捜査に加わっているだけでも例外中の例外さ。そこで、この解決したくて凄腕のハッカーに仲間になってくれたらって思ったんだよ」
 まあ、いくら頭が良くても日本では小学生が先生になれないものね。教員免許っていうものが必要だもの。そういえば、お父さんが動物のお医者さんになったのも、その方が動物たちのためにできることが多いからなのかもな。
「なんだか大人って面倒ね」
「そうかもしれないね。愛花ちゃんがそんな大人びたことを言うなんて驚きだけどさ」
 わたしが真面目に話しているのに優海さんは笑っている。なんだかヒカリちゃんみたいに妹扱いされているよね……あ、そっか、少しヒカリちゃんの気持ちがわかったかも。わたしもヒカリちゃんを自分よりも子供として接していたのかもしれないな。
「ちょっと、笑わないでよ!」
「いや、悪気はないんだ。それで、おしゃれハッカーはどうやってこの事件を解決するのかな?」

 鉛筆、虫、捕獲……う~ん。

「筆箱で捕獲する……っていうのはどうかな」
「どういう意味?」
「いや、男子って変なものを筆箱に入れているじゃない。それで思いついたの。大きな筆箱にいっぱいの鉛筆を入れて、あの虫型ロボットが入ってきたら蓋をして閉じ込めちゃえばいいじゃない。あ、虫かごみたいな檻でもいいんだけどさ」
「……なるほど。それなら僕に準備を任せてくれないかい。愛花ちゃんはコンサートをしてくれればいいからさ。きっと愛花ちゃんは歌の力でロボットと心をかよわせることができるんだろう? なら、とびっきりの舞台でこの事件を解決しよう!」
 そう言うと、すぐに優海さんは無線機で指示を出し始めた。
 ええっ! もしかして、わたし大勢の前で、しかもこんな格好でマジカルハッキング、つまり歌のコンサートすることになっちゃうの!? 恥ずかしすぎるんですけど!!
 それに優海さんは勘がいいな。見ていたとはいえ、説明もしてないのにマジカルハッキングのことがわかっちゃうんだから。
 上空からパラシュートで投下されたのはわたしの身長よりずっと大きなドリンクボトル風のペンケースとこれまた巨大なピンク色の四角い筆箱。四葉銀座の駅前では一体が何が起こったのかとみんなが注目している。
「ステージにあがって、僕も一緒にいるから」
 体育館の舞台くらい大きな筆箱。優海さんはわたしにこの上へあがれというらしい。
 できるかっ! 恥ずかしくてくらくらしてきた。なんでわたしがこんな大勢の前で歌わないといけないのよ。ナゾ解きはともかくアイドル活動なんておとなしいわたしには絶対に無理! だって、わたしは特別な子じゃないもん。そんな才能なんてない……。
「マナちゃん、事件を解決できるのはおしゃれハッカーのマナちゃんだけなんだらに」
「そんなこと言われたって、わたしにはできないよ……キラキラ輝く特別になんてなれない。そういうのは神様に選ばれた子だけなんだ!」
 いやいやとだだをこねる子供なわたしの涙が……優海さんのジャケットにしみ込んだ。
「無理なことばっかり頼んでごめんね。僕に愛花ちゃんみたいな力があれば、愛花ちゃんを泣かせないですんだのに……」
 わたしってば優海さんにぎゅっと抱きしめられる! ええええっ! なんだか変だよ。女同士なのに胸がどきどきする。それにバニラみたいな良い匂いがする。これって、それだけ優海さんが素敵な人だからだよね。恋じゃないよね!?
「これだけは信じて欲しい。きみは神様に選ばれたから生まれたんだよ。生まれるっていうのはとっても特別なことなんだ。だから、自分に自信を持っていいんだよ」
 あ、優海さんもママと同じようなことを言っている……。不思議。
「マナちゃん! 僕の力をふたりで使うらに! ひとりじゃできないことも、きっとふたりならできるらに!」