おしゃれハッカー

「呪いの話ってここだよね」
「そう、図書室の呪い」
「誰もいないのに男の子の声がするんだってさ、怖いよねぇ」
 お化けなんてちっとも論理的じゃない。だけど、わたしが来たのも図書室の呪いのナゾを解くため。
 AI(アーティフィシャルインテリジェンス)、すなわち人工知能が活躍している時代に、図書室の呪いなんていう非科学的な噂を信じられる?

 幽霊はいるのかいないのか? 大人はいないに決まっていると言うけれど、いない証拠もないじゃない。根拠もなく決めつけるほどわたしは愚かじゃないわ。
 それに、もしも幽霊がいるのなら確かめたいこともあるの。

 ちょっとばかり騒がしいふたり組の先客は、学校司書に怒られながらもめげずに小声で会話を続けていた。
 彼女たちは辛抱強く、図書室の呪いのナゾを解き明かそうと粘っていたんだけれど……いつしか窓から夕陽が差し込み、校舎が茜色に染まる頃になると、さすがに飽きちゃったみたいね。
「いないじゃん」
「やっぱりデマだった、早く帰らないとママに怒られちゃうよ」
 なんて他愛のない会話をしながら図書室を後にする。それもそうだよね。お化けなんてやっぱりいないのかなってわたしも思った。
 でもね、わたしはナゾを解きたいの。ナゾのあるところに四色愛花(よんしょくまなか)あり。どんなナゾでも華麗に解いてみせる。お化けがいないのだとしたら、他になにか男の子の声がする原因があるはずじゃない。
 それに、わたしはもう5年生のお姉さん。だから、哀愁の漂うどこか物悲しいメロディが鳴る下校時間のギリギリまで図書室にいても、早く帰ってきなさい、なんて言われることはもうないの。
 もっとも、それは今まで小言を言っていた人がいないからなのだけれどね……。