でも、今更悔やんだところでもう遅い。
萌からは『今度その彼に会わせて』としつこく詰められ続けて、断る隙なんて与えてもらえなかった。
「なんでそんな見栄はったかなあ」
「つい、ほらお酒も入ってたし。あの人が幸せそうにしてるの見てたら、なんか」
「まあ、分からなくはないけど」
グラスの中で氷がカランと音を立て、沈黙がはしる。
「私だったら、あんな二股男、ヒールの先で足でも踏んづけて帰ってくるところだわ」
そう言って、優里はあっさりとお酒を空にした。
男前な彼女の発言に、思わずくすりと笑いがこみ上げる。
ほんの少しだけ、胸がすかっとした気がした。
「それで? 結局のところ〝彼氏〟の当てはあるの?」
タブレットのメニューを開いてカクテルを追加注文しながら、優里はさらっと言った。
「あると思う? 男友達もロクにいないのに」
頼める友達でもいれば苦労はしていない。
スマホを開けば、メッセージアプリに並ぶのは通知のない友だちリスト。学生時代に繋がったままの名前、会社の付き合いで交換しただけの人——画面を眺めても、声をかけられそうな相手なんて誰ひとりいない。

