マッチングアプリのお相手は、嘘つきな陸上自衛官でした


 初夏の空はやけに澄んでいて、式場のガーデンには祝福の風が吹いていた。

 花嫁は純白のドレス。
 隣で穏やかに微笑む〝彼〟は、まるで幸福そのもの。

 結婚式日和? 冗談じゃない。

 会社の同僚たちに囲まれて、ふたりの目の前に用意された〝特等席〟から「おめでとうございます」なんて心にもないセリフを口にする。

 誰よりも平静を装って、それでいて、誰よりも冷めた視線を送っていた。


「相手は、てっきり涼香(すずか)だと思ってた」


 メイン料理のフィレ肉を口に頬張った途端、横からそんな唐突な声が飛んできた。

 思わず、ワイングラスが指先から滑りそうになる。
 振り返ると、同期の萌(もえ)がまっすぐ高砂を見ていた。


「え? なにそれ、冗談やめてよ」


 栗色の長い前髪を耳にかけ、笑ってごまかした声とは裏腹に、心臓の奥が痛い。

 私自身、半年前まではそう思っていたから。


「観察眼、けっこう自信あったんだけど。私もまだまだだな」


 萌は肩をすくめて笑う。

 なんの曇りもない無邪気な笑顔が、余計に残酷に見えた。

「ねえ。涼香って、彼氏いないの?」

 噂好きな彼女の好奇心いっぱいの、濁りのない瞳。

 目を逸らした先には、花嫁の手を握ってさっきよりも優しい顔で笑う彼がいる。

 絵に描いたような幸せを見つめているうち、口が勝手に動いていた。