まさか、そんなことを思っていたなんて。
気づかれないところでちゃんと考えてくれていたんだと思うと、不思議と胸が温かくなる。
「それに……」
ふと、片山さんが手元のグラスに目を落としながら、静かに言葉を継いだ。
「こうして誰かと食事をするのも久しぶりだったので。どうしても、失敗したくなくて」
冗談めかした口調の奥に、ほんの少しだけ、本音が混じっている気がした。
思わず、私の顔にも自然と笑みが浮かぶ。
たぶん、それは私も同じ気持ちだったから。
「実は私、メニューは半分くらいしか分からなくて……。見栄張って『迷っちゃう』とか言っちゃいました」
緊張の糸が切れ、彼につられて私まで本音が漏れる。
そう笑いながら打ち明けると、片山さんも小さく笑った。
「思ってたより、ずっとかわいい人だ」
すくったシャーベットが、すとん、と器に落ちる。
「え?」
「……失礼。口に出てました?」
かすかに揺れたスプーンの先で、私の心もわずかに揺れた気がした。
食事を終えた私たちは、身構えていたのが恥ずかしいくらいにすんなりとホテルをあとにした。

