被写体という「モデル」を巡る葵のトラブルは、過去にも起きていた。
葵の才能を利用したいインフルエンサーを気取った女が、葵にすげなくされたのを逆恨みして、男を雇ったりしたことがあったのだ。
*****
夏休みの終わり、コンビニからの帰り道。
たまたま葵の家に遊びに行っていた私は、葵と二人、夜分に思い立ってアイスを買いに行った。
「お前か、潮崎葵ってのは」
アイスが溶けないうちに食べながら帰ろうなんて、他愛もない会話をしていた私たちの前に現れた、三十代くらいの男。
見るからに反社っぽい雰囲気を醸し出していた。
念の為「知ってる人?」と葵に小声で確認するも、案の定、首を横に振られた。
私たちのやり取りに、男が口の端を持ち上げて笑った。
「ソッチに覚えはなくても、コッチには事情があるんでね」
男の片手が上着の内ポケットに入るのを見て、嫌な予感が走る。とっさに、私の身体が男の動きを封じようとした。
瞬間、
「ダメだ、楓!」
叫ぶと同時、葵は私の前に割り込んでいた。男が取り出したナイフが、防御姿勢をとった葵の片腕を切りつけた──。
「っ……、あおいッ!」
私が悲鳴を上げるのと男が捨て台詞を吐いて逃げ出すなか、葵が、その場にくずおれる。



