上書きされたファーストキス〜変わらない距離の、その先で〜

葵は綺麗で美しくあるものが好きで、それは人から動物から自然から、あまりこだわりはなかった。

それらをフィルムに焼き付けるのを日常にしている。『刹那の切り取り』が、葵の宝物だそうだ。

「綺麗なものを見ると閉じ込めておきたくなるんだよね。僕だけの世界に留めておきたくなる」
だから写真やってるのかなぁと、以前、葵は私にそう言っていた。

高校に入ってからは、それが主に身の回りの人間に向くようになったらしい。

今日みたいに、自室の撮影所に、モデルとして自分の気に入った相手を呼んだりなんかして。

でも、なかには葵の誘いを、モデルを口実にした口説きと思ってしまうような、そっち方面にしか頭がいかない人間もいるワケで。

……本音を言えば、やめさせたい。だけど、ただの幼なじみでしかない私に、葵の自由を止める権利はない。

「……変なコトされなかった?」

「楓が入って来るのが、あと五分遅かったら、されてたかもね」

冗談ぽく言う葵に、胸がきしむ。

葵がそういうこと、こだわらなくなったのは、いつなんだろう?

自分の身体が傷つけられるのを他人事みたいに語った、あの夏の日がよみがえった。

「葵……自分の身体(からだ)、もう少し大切にしなよ……」

ぽつんともらしたつぶやきは、葵の心に届くのかな。