上書きされたファーストキス〜変わらない距離の、その先で〜


葵の前で、一ヶ月分のたまりにたまった話をした。

葵は適度に相づちをうってくれ、場合によっては適切なアドバイスをくれた。

──やっぱり私は、葵と話さないと駄目なんだと思い知らされた。

「じゃあ……私、帰るね」

いつものように、夕食までご馳走になって、身支度をしたのち葵に別れを告げる。

「うん。じゃあね、楓」

「──あのねっ、葵……」

にっこりと微笑み返されて、私は必死に言葉を探した。

葵に「この事」を伝えたからと言って、どうなるわけではない。でも、言わずにはいられなかった。

「私……葵が私にキスしたこと、許せないと思った。

私の気持ち知ってるくせに、私のことからかうだなんて……葵を、そういうヒドイ奴だなんて思いたくなかったからなの。

葵は……私の好きな葵は、いい奴だって、思っていたかったからなの。

だから本当は、そんなに怒ることじゃなかったんだ。

馬鹿みたいだけど……だからね、だから葵──」

「キスしていい?」

葵の腕が、私の首の後ろに回されて、その顔が近づいて……葵は、唐突にそんなことを言った。

だから──どうして、そうなるのよ……。

「あんた、いきなり、なに言ってんの?」

「だって楓って、事前に承諾を得ないと、させてくれないみたいだから」

至近距離から、きょとんと葵の可愛らしい瞳に見つめられ、私は頭が痛くなった。

「いい──」