上書きされたファーストキス〜変わらない距離の、その先で〜

「あんた……変わってるっていうか、おかしな奴だとは思ってたけどっ……。
こんな……こんなこと私にするなんて、ひどいよ。サイテーッ……!」

思いきり、にらみつけてやる。
葵は、初めてバツ悪そうに、私を見返した。

「ごめん……」

──自分の気持ちが、もてあそばれた気がした。

葵にしてみれば、他愛なく、ちょっとした好奇心から「してみた」だけで、私の反応を楽しむためのものだろう。
茉璃に対して「美少女のフリ」をした時と同じ。

分かってる。葵に他意はない。
葵にとっては猫がする「鼻チュー」と一緒で、挨拶のようなものなんだ。

そう自分に言い聞かせながら、口をひらく。

「こういう冗談、私、嫌いだから。覚えておいて。……二度と、しないで。
今回だけは許してあげるけど、今度やったら絶交だからね!」

「──……分かった」

「もう……帰って」

「……お大事に」

必要最低限の言葉を残し、葵は部屋を出て行った。

私の「好き」と葵の「好き」の明確な違いが現れた──史上最悪の、ファーストキスだった。