上書きされたファーストキス〜変わらない距離の、その先で〜

ごまかすように、あわててミルクティーをすすった。

葵の視線が、ちらりと動く。

私の浅はかさにあきれつつも、心配してくれているのが分かった。

そして、いまになってようやく、自分のしでかした事の重大性に気づく。
あんな風に威嚇(いかく)はしたものの、仕返しされる可能性も、残っているからだ。

ひょっとしたら、あいつら、また葵に手を出すかもしれない。
そしたら……そうしたら?

「大丈夫だよ。もう、あの連中の好きにはさせないから」

私の心のなかを読んだように、葵が言った。

「それ、どういう──」

言いかけた唇が、葵のやわらかな唇に、ふさがれた。

驚いて、手にしたマグカップを、落としそうになる。
それを奪いながら、葵の唇が離れていく。

「……訳を知りたい? それとも、続きを知りたい?」

いたずらな笑みが吐息まじりに向けられ、頭のなかが、一瞬、真っ白になった。

だけど……!

「なっ……なにすんのよっ!?」

「なにって、キスしただけだよ」

さも当然のことのように言いきる葵を見ながら、葵の唇の感触が残るそこへ、手の甲を押しつける。

心臓がドクドクと脈打って、思うように息ができない。

葵が……私にキスするなんて、思わなかった。

そういう対象に見られてるとは考えられなくて……だから、涙が出た。

悔し涙だった。