上書きされたファーストキス〜変わらない距離の、その先で〜

「葵!」

思わず駆け寄ろうとした私の背後、潜んでいた男たちに不意打ちを食らってしまう。

蹴り飛ばされた反動で地につく膝。そのまま左右から腕を掴まれ、背後から羽交い締めにされる。

「離しなさいよっ……!」

抗う私の左肩を、男の一人が力任せに捻(ひね)り上げた。それでも構わず振り払えば、左肩が鈍い音を放った──。

「……っ、は……!」

激痛が、走る。
けれど、葵の虚無と絶望を抱えたような瞳を見た瞬間、私のなかで痛みが怒りに切り替わった。

「……っ、あぁぁぁぁっ!!」

腹の底から声をあげ、無理やり拘束を振りほどく。信じられないといった表情で、男たちがたじろぎ、後ずさった。

「なっ……」

「……殺す、わよ。本気だから。
私、こう見えて……執念深いわよ? 死にたくないなら、あんた達も……っ、……本気で、かかってきなさいよっ……」

力をこめる右腕とは逆に、だらりと垂れ下がる左肩。
脂汗が、背中と胸もとを伝っていく。……めまいがした。

「ばっ……馬鹿じゃねーの? 遊びだよ、こんなの。なに、本気にしてんだよ……?」

リーダー格らしい男が威嚇するように、落ちていた角材を拾って、こちらに狙いを定めてみせる。
だけど、その持ち手はブルブルと震えていた。