上書きされたファーストキス〜変わらない距離の、その先で〜


子供みたいに泣きながら、しゃくりあげる私に、葵がぽつんと言った。

「楓、僕のこと好きなんだよね。ごめんね、心配かけて」

「なっ……なんで知ってるのよっ」

カァッと、頭に血がのぼる私の前で、葵はふわりと笑った。

「人の気持ちが読めるから、僕」

女の子みたいな、やわらかな微笑み。

自分の気持ちが筒抜けで、どうしていいのか、分からない。

苦し紛れに開き直り、唇をとがらせて言ってやる。

「そうよ、好きよ。好きで悪い?」

「悪くないよ。僕も楓、好きだし」

きょとんとする葵。

不機嫌になる私が理解できないくせに、変なところだけ、気が回るんだから。
おまけに、人のこと好きとか軽々しく言うし。

分かってないのよ、全然。私の気持ちなんか、これっぽっちも……!

「葵は嫌いな人間のほうが少ないじゃない! 簡単に、誰にでも好きって言うし。私の『好き』とは違うのよ。
……もうっ……、こんな時に、なに言わせるのよっ……!」

感情に任せ、つい葵の腕を叩きそうになって──片腕にある包帯が目に入る。

私をかばった細い腕。そして、私の未来を守ってくれた腕だ。