パニックになった私をなだめ110番通報させた葵は、駆けつけた警察官に冷静に状況を説明した。
幸い、傷も浅く後遺症も残らないという医師のお墨付きをもらい、事情聴取を終えた私は、ようやくホッとしたものだった。
──でも。
「なんで……なんであの時、私の前に出たの?」
翌朝。病院から戻った葵を玄関先で捕まえて、無理やり部屋に上がった。
あとから思い返せば、心身共に疲れていただろうに、葵は私に優しく笑ってみせた。
「楓が背負うリスクと僕が背負うリスク、天秤にかけたら、こうなっただけだよ」
──私は、武道家として大学推薦が決まっていた。
もし私があそこで男を叩きのめせば、真実はともかく「特待生の暴力事件」として扱われる。
それを瞬時に理解したのは、私ではなく葵だったのだ。
「……っ、……バカだよ、葵は……! 私より、弱いクセに……!」
口からついて出た悪態とは裏腹に、視界が涙でにじんだ。
葵の気持ちを知ってなお、庇ってもらえた嬉しさより、苦さが勝った。
喉の奥がつまって、吐き出せない想いの代わりに涙があふれる。
葵が自分の身体を「投げ出してもいい程度のもの」だと思っていることが、何より悲しくて、悔しかった。
自分のことを価値がない存在みたいにぞんざいに扱って欲しくなかった。
幸い、傷も浅く後遺症も残らないという医師のお墨付きをもらい、事情聴取を終えた私は、ようやくホッとしたものだった。
──でも。
「なんで……なんであの時、私の前に出たの?」
翌朝。病院から戻った葵を玄関先で捕まえて、無理やり部屋に上がった。
あとから思い返せば、心身共に疲れていただろうに、葵は私に優しく笑ってみせた。
「楓が背負うリスクと僕が背負うリスク、天秤にかけたら、こうなっただけだよ」
──私は、武道家として大学推薦が決まっていた。
もし私があそこで男を叩きのめせば、真実はともかく「特待生の暴力事件」として扱われる。
それを瞬時に理解したのは、私ではなく葵だったのだ。
「……っ、……バカだよ、葵は……! 私より、弱いクセに……!」
口からついて出た悪態とは裏腹に、視界が涙でにじんだ。
葵の気持ちを知ってなお、庇ってもらえた嬉しさより、苦さが勝った。
喉の奥がつまって、吐き出せない想いの代わりに涙があふれる。
葵が自分の身体を「投げ出してもいい程度のもの」だと思っていることが、何より悲しくて、悔しかった。
自分のことを価値がない存在みたいにぞんざいに扱って欲しくなかった。



