冷遇令嬢ですが、前世の知識と先見の力で運命の王第殿下と新しい国を作ります。

フレデイはしぶしぶ腰を上げてリリーの部屋に向かった。

「こらあ、しゃんとして騎士らしくフレデイらしく申し込むのよ。齢なんて関係ないのだからね。フレデイは最高なのだから」

それを聞くとフレデイの背中がピンと伸びた。

いまだに鍛錬を怠らない三十二歳の騎士は、しゃんとしていてかっこいいのだ。

ジャスミンは彼を待つ間マリアに紅茶を入れ変えてもらってゆっくりと応接間でお茶を飲んだ。

一時間もしない内にフレデイは少し涙ぐみながら応接間に戻ってきた。

「どう?うまくいったでしょう?」

「はい、リリーは最初泣き出してしまって断られるのかと思ったら、抱き着いてきて遅いと言って今度は怒ってました」

「あはは、さすがリリーね。じゃあこれからこの家の大黒柱は名実ともにフレデイになるの。だからよく聞いて」

「はい」

「まず今カフェの隣にある”パーテイ承ります“は当然閉めなければならないわ。その後をどうするか考えなければならないわね。それはフレデイとリリーに任せるわ」

「ジャスミンお嬢様、その期限は?」

「宰相には最低三カ月は欲しいと言ってあるの。本当は半年と言いたいところだけれど、あまり引き延ばすと国王がしびれを切らせて暗殺者を寄こすかもしれないと、宰相は心配しているの。だから三カ月を目途にするわ」

「他には?行ってしまわれる時は教えて下さるんですよね」

「いいえ、ある日急にいなくなるつもり、だからその時はフレデイから皆に説明してほしいの。先に説明してしまうと皆平静ではいられないでしょう?」

「それならどうやってお嬢様の無事を確認すればいいのですか?」

フレデイは今にも泣きそうな顔でジャスミンに詰め寄った。

「連絡手段は考えてあるの。でも窓口はフレデイだけよ。どこにいるかも知らせないわ。でも手紙はちゃんと届くようにする。行ったばかりの時はそんな余裕があるかどうかわからないけれど落ち着いたら必ず手紙を出すわ。」

「ここに手紙を?」

「いいえ、そんな事をすればすぐに見つかるでしょう。出来れば国王陛下には死んだと思われるほうが良いもの」

「行き先はもう決めているんですか?」

「ええ、最初に行くところは決めているの。でもそこに留まるかまたほかの国に行くか行ってみないと分からないわね」

「お嬢様、楽しんでいませんか?」

「ふふ、少し楽しんでいるかもね。でも悲観的になるよりはいいでしょう。自分一人だもの何だってやれるわ。お金はあるんだから、国王陛下の思うつぼなんかには絶対ならないわ」

「余計なこぶが付いていないからってことですか、皆お嬢様にぶら下がっているばかりですものね」

少し拗ね気味に言うフレデイ

「そうね。でもだからここまでやれたのよ。皆がいたからここまでやれてこんな時でも余裕を持っていられるの。後を託せる大黒柱も信頼できる男だし、何も不安に思わずについてきてくれた皆に本当に感謝しているわ」

ジャスミンは遠くを見る目をした。