『わたしが王妃として不適格な12の理由』をプレゼンしたら、年下王子に「全部知ってる」と言われた。


 どうも断らせる方向ってのは上手くいかないみたいだ。
 そこで次に考えたのは、わたしよりも相応しい令嬢を紹介作戦だ。

 わたしみたいな、ものぐさで家柄だけの令嬢よりも、ずっと王家に相応しい人物はいるハズ。
 適齢期の令嬢をリストアップし、そこから容姿、家柄、人柄などを調べあげて、アデルに合いそうな人を資料にまとめた。
 今度は凝った資料は作らない。
 わたしは同じミスはしないのだ。

 アデル一人ならスケジュールを押さえる必要もない、というかちょくちょく会っている。
 いつもは、わたしが何かしているとアデルが会いに来るパターンだった。

 でも今日はアデルの執務の休憩中に割り込んでやった。
 先日の意趣返しのつもりだった。

 涼しい顔で優雅に紅茶を嗜むアデル。
 手ぶらじゃ悪いからと、せっかく持ってきたナッツケーキにも一個しか手を付けない。
 なによ、昔から好きだったじゃない。
 それとも、わたしがすでに三個も食べちゃってるから遠慮してるの?

 ……まあいいや。 お菓子は本題じゃないし。
 アデルが淹れてくれた、やけにぬるい紅茶でケーキを流し込みながら、わたしは早々に話を切り出した。

「こちらのソラ・フィルフィーア公爵令嬢などはいかがでしょうか? 血統良し、人柄良し、そして殿下の一つ下で適齢となっております。 わたしと違って、豊かなお胸をお持ちでございます」
「興味無いな」

 にべもなかった。

「で、ではこちらは? エリリナ・リルナーデ侯爵令嬢。 わたしのお友達でもあります。 彼女も胸がとっても大きいです。 わたしと違って」
「興味無いね」

 取り付く島もなかった。

「な、なんで? 殿下だって男性なんだからおっきなおっぱいが好きなハズ! わたしは控えめだけど…………控えめですけど……」
「二回も言わないでよ。 それに自分で紹介しておきながらヘコまないでよ。 おまけに何で敬語なの?」

 いっぱいツッコまれた。

「だってさ、王妃になるなら、スタイルが良くって美人で賢い女性の方が良くない?」
「胸とか容姿とかそれこそ全然関係ないよ」
「じゃあ、何がいいの?」
「リディがいいんだ」
「うごごご……」
「そもそもさぁ」

 アデルの口調が、珍しく強くなった。
 ん? なんだかちょっと怒ってる?

「ぼくはず~~~っと言ってるよね? リディがいいって」
「あうっ……」

 思わず息が詰まる。
 アデルが距離を詰めてきたからだ。

「他の女性の方が条件が良いとかって……そんな理由でぼくが乗り換えるとでも思ってるの? ねぇ?」

 お、怒るなよう……
 しかも、いつの間にこんなに背が高くなったのよ……年下のくせに。
 でもわたしの方は何も言えなくて、身を縮めるばかりだった。

「うぅ……」
「ぼくの気持ちを軽く見られているようで不快だよ。 ねぇ、どういうつもり? リディはそんなにぼくと結婚したくない?」
「そ、そ、それは~」

 わたしに王妃なんて絶対ムリだと思う次第でして~……

「……」
「……え、えへ?」
「……ハァ」

 目が泳ぎまくり、ついには笑って誤魔化したわたしに、呆れたように溜息を漏らすアデル。

「面白いから好きなように放っておいたけど、これは気分が悪いよ。 ……もうやめてね?」
「う……はい、ごめんなさい」

 言い訳もできない。
 確かにわたしもアデルからぐいぐいと貴族の令息を紹介されたら気分が悪い。
 余計なお世話だった。 申し訳ない。

 シュンと小さくなったわたしに、すっかり怒気の抜けたアデルはいつもの穏やかな笑顔と口調で言った。

「ふふ。 とにかく、ぼくのリディへの気持ちは、五歳の誕生日に婚約が決まった時から変わらないから」
「……それって、すごく重くない?」
「重いよ。 ぼくのキミへの愛は。 そこは分かってね?」

 うーん、アデルには悪いけど正直それは分からない。
 わたしにとっては、小生意気でイケメンな弟としか思えない。

 これ以上お仕事も邪魔しちゃ悪いと思い、執務室を後にした。

 部屋を出る際に、頭をぽんぽんされた。
 むぐぐ……昔はわたしが撫でてあげる側だったのに!

 ……それにしても、いつの間にこんなに手が大きくなったんだろう。

 もう昔馴染み過ぎて、ドキドキなんかは感じない。
 でもさっきの申し訳なさで頭がいっぱいだったので、仕方なく黙って撫でられてあげた。

 令嬢紹介作戦も大失敗だった。