次に考えたのはプレゼン作戦。
わたしがいかに王妃に向いていないかを、セルヴァリオン王家の皆様に直接説明する事にした。
ダメダメなわたしを、うんと分かりやすくアピールする。
そうすれば「こんな娘が次期王妃なんて!」と考え直すに違いない。
まずは資料を作った。
コンセプトは、わたしがいかにダメな令嬢かを伝えること。
まずは自分の欠点を箇条書きでいっぱい書き連ねた。
「……自分のダメな所を書き連ねるのはツライ」
いや、負けるなわたし!
それらの欠点をいくつかのグループに分けたりして、見出しの文を考えていく。
……ここはキャプションを付けた方がいいな。
ここのフォントサイズはもう少し大きく……PCが欲しい。
前世でこういう作業は散々やった。
記憶を引っ張り出し、アレやコレやと試しながらも時間をかけてコツコツと作った。
こうして出来あがった資料が……
『わたしが王妃として不適格な12の理由』
タイトルもバッチリ!
手書きで4部も作るのは大変な作業だった。
でも、今までぐうたらしていたツケだと思い、頑張った。
いや~、わたし本当に頑張ったよ。 パワポもなしに。
資料を久しぶりに作るのは思った以上に楽しくて、思わず夜更かししてしまった。
しかも、作っただけで結構満足しちゃった。
いやいや、ここで満足しちゃいけない。
ちゃんとコレを聞いてもらうんだ。
次にやるのはスケジュール調整。
王家の面々がとても忙しいのは火を見るよりも明らか。
面会やお茶会、会議の時間を根回しして調整して、隙間時間を作っていく。
お城にはわたしの顔見知りも多いので、少し時間をズラしてもらうだけならそれほど難しくはなかった。
そうしてなんとか、王さまと王妃さまとアデルへのプレゼンタイムを確保した。
「本日はお忙しい中、お集まりいただきありがとうございます。 司会を務めさせていただくリディア・オルタナードです。 よろしくお願いいたします」
「わ~(ぱちぱち)」
「…………うむ」
「ふふ」
わたしの畏まった挨拶に、パチパチと手を叩いているのが王妃さまで、難しい顔で腕を組んでいるのが王さま。
興味深そうに笑っているのがアデル。
ちなみに、婚約したのはもう十年以上も前なので、王さまと王妃さまとも仲は良い。
二人とも穏やかな性格で、アデルの気質とよく似てる。
わたしが用意した資料はすでに各々の手元にお配り済みだ。
ようし、やったるで! と、伊達眼鏡をクイっと持ち上げる。
こうして『わたしが王妃として不適格な12の理由』のプレゼンが始まった。
――「◆朝が弱い」「◆すぐ怠ける」「◆寝るのが大好き」
出鼻、まずはぐうたらなわたしを懸命にアピール。
「昔からじゃない? リディアちゃんはそれでも遅れてきたことは無いし」と王妃さま。
「……健康的だ」と王さま。
「知ってる」とアデル。
――「◆すぐ顔に出る」「◆腹芸が苦手」「◆うるさい」
政治的に向いていない事をアピール。
資料にもココが大事!と、わたしの顔の絵付きの吹き出しでちゃんと強調もした。
「素直でカワイイわよね」と王妃さま。
「……かわいい」と王さま。
「知ってる」とアデル。
だみだこりゃ。 何の手ごたえもない。
残りの項目――「◆ドレスの裾をよく踏む」「◆威厳がゼロ」「◆食べ物の好き嫌いが多い」「◆猫舌」「◆思い込んだら一直線」。
これらも似たような感じで全部打ち返された。
そして最後の一項……
――「◆わたしの方が殿下より二歳年上」
絞り出した感じがしなくもないけど、これは問題でしょ! ……たぶん。
「それ、婚約を決めた時から分かっていたことよ?」と王妃さま。
「……たった二歳差の何が問題なのか」と王さま。
「全部知ってる。 それに、ぼくの方が背は高いし」とアデル。
「ぬぐぐ……」とわたし。
お忙しい方達をこれ以上拘束も出来ず、それでお開きとなった。
落ち込みながら、配った資料を回収する。
「アデル、それも返して」
「これはもらっていくね」
「なんでよ」
「記念に」
「何よ、記念って……」
「リディの字、好きなんだ。 いいでしょ?」
いい、わけない。
資料とはいえ、アレにはわたしのダメな所が沢山、しかも自らの手書きというある意味恥ずかしい代物。
なのに、ニコニコと機嫌の良い彼に強く出る事も出来ず……
結局、アデルに渡した一部だけ回収できなかった。
その日は、何が悪かったのか一人反省会を行い、また夜更かしした。
「あ~、全然通じなかった。 資料は悪くないと思うんだけどなぁ」
必死に作っただけに悔しくて、ベッドで枕に顔を埋めて足をバタバタ。
すこしでもストレスを解消する。
いくら資料を見返しても、何をミスしたのか分からなくて、また転がった。
次の日の昼、先日のように、再びアデルが侯爵家の屋敷へとやってきた。
「昨日の独演会、とても面白かったよ」
「ほんと?」
「うん。 でも、父上も母上も『どれも王妃に向いてない理由にはならない』って」
「……」
「あと、資料はすごく分かりやすかったって。 整理されててまとめ方も上手いし、とても頼もしいって感心してたよ」
「……そう」
「むしろ前より安心したみたい」
「なんでよ!」
そうか、しまった。
資料の出来の良さが裏目に出てしまったんだ。
あ~、そっちだったかぁ。 わたしが優秀過ぎたばかりに……
楽しく作ってる場合じゃなかった。
それにしても、毎度のことながらアデルがやってくるのは必ずお昼過ぎだ。
わたしが朝弱いって見抜かれているみたいで、そこもイラっとした。
プレゼン作戦も失敗に終わった。


