『わたしが王妃として不適格な12の理由』をプレゼンしたら、年下王子に「全部知ってる」と言われた。


 初手。

 まずは親にチクった。
 やっぱりイヤだ、と。
 婚約は御免だから断って、と。

 幸いなことに我がオルタナード侯爵家は大きな商会も持っていて、上手く軌道にも乗っている。
 歴史もそれなりにあって侯爵家としては名門でもあるし、今すぐ没落する恐れも少ない。
 つまり、必ずしも王家と誼を結ぶ必要もない。
 そもそも、この婚約は王家側から打診されたものだったのだから、なにがなんでも嫁げというモノでも無かった。

「急にどうしたんだいリディア? 面倒だとなんだと文句は言いつつ、婚約自体は嫌がってなどいなかったではないか」
「とにかくイヤなの! ねえ、一生のお願いよ。 お父さまなら話を通せるでしょう?」
「お前はそれを何回使うつもりなんだい……?」

 前世を思い出した今、もう一回くらいはおまけで使えるんじゃないかと思った。
 父の腕を両手で掴んで、ぶんぶんと揺する。

「ねえいいでしょ! 可愛い娘がこんなに頼んでるのよ!」
「可愛い娘ならこんな乱暴な真似はしない……」

 だが、なんだかんだ甘くて優しい父だ。
 眉間に皺を寄せながらも、最後には「分かった」と了承してくれた。 やったー!
 でも、最近はサボりがちな王妃教育の授業の件はバレていて小言を言われた。

 むぐぐ……でも大丈夫。
 婚約がなくなれば、そんな授業だって無くなるんだから。
 そうして翌日には、さっそく父は王家に話を通してくれた。

 ダメだった。

「むしろ心配されてしまったよ。 式の日取りが具体的に決まって不安になってしまったのか、と」

 お父さまの役立たず! もうちょっと粘ってくれたっていいじゃない!
 と、心の中で父への誹謗の声を上げていると……

「最近休みがちな王妃教育も、やはり不安が体調に出ているのではないかとも心配されてしまったよ」

 やっべ。
 単に面倒くさくてサボっていただけなのに、思わぬところで裏目に出てしまった。
 ちゃんと真面目に受けておけば、すんなり婚約破棄も通ったハズなのに……!

 次の日の昼、話を聞いたアデルが、侯爵家の屋敷にわざわざ直接言いにやってきた。

「やあリディ。 侯爵から話は聞いたよ」
「……」
「何かあったの? 不満があるならぼくに直接言ってくれればいいのに」
「……」
「まぁ、今すぐ話したくないならいいけど」

 何か言わなきゃと思うけれど、本人を前にすると言葉が出てこない。

「…………ぷぅ」
「ふくれた頬も可愛いよ。 あ……ドレスの採寸、来月だって。 楽しみにしているよ」

 それだけ言ってアデルはさっさと帰ってしまった。

「ぐぎぎ…………悔しい!」

 言いたい事はあったはずなのに、結局何も言えなかった。
 それなのにアデルの余裕の顔が、なんかムカつく!

 親チク作戦は失敗に終わった。