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昨晩、ダレンはジェームズから水と食事をもらい、トイレと浴室の場所を教えてもらった。ジェームズは「食事は一日三食しっかり用意します」と言った。
ダレンはその言葉に半信半疑だった。
だが、今朝起きるとダレンの朝食が用意されていた。少し固いパンと、豆とトマトのスープ、それと干し肉と干し葡萄だった。ダレンは「もっとひどいもの」を想像していたが、食事は普通に食べられるものだった。ダレンも少し安堵した。
「まあ、食事と水と、時間かかるけれど風呂も入れる」
邸のインフラは思っていたよりは整っていて、ダレンの部屋には電気はないが、主要な場所には一応は電気も通っていた。水も、水道をひねれば手に入ることが分かった。ボイラー設備もある。この古い邸が、過去に栄えていた当時として、おそらく「最新鋭設備」を有していたと思われる。
ただ、2007年と比べて「旧時代」だった。
「まあ、ない物ねだりしても仕方ない」
ダレンは今はこの邸で生きていくことを考えることにした。
ダレンはジェームズの命令で邸の中の仕事を片付けていく。
「この邸で何もせずに過ごすことは、それはそれで退屈なんだろう。役割がある方がマシだ。彼女「ロザリー」の役に立っているとでも思えばいい。というか「使用人として働いてもらいます」と言ったが、この邸に特に仕事は必要ないんじゃないか?」
今日は「清掃しておくように」とだけジェームズに伝えられた。
それで清掃用具を持って、邸の中の掃除をしているが、邸の中は別に汚れているわけでもない。ただ言われたからにはきちんと掃除をしていく。
〈俺。家に連絡も出来ていないけれど大丈夫かな?〉
ダレンは「自分が居なくなったことで周囲は大変なことになっているのではないか?」と考えた。ダレンのその不安に、ジェームズは「こちらで上手くやるので気になさらず」と言ったが、それでも気になるのは当然のことだ。
それでもダレンはこの邸に留まる。
一つは、逃げ出そうとしても「どうせ逃げれないだろうな」と思ったこと。そしてもう一つの理由は、彼女「ロザリー」を知りたかった。
「彼女、どうして俺と会えたことで喜んだのだろう?」
* * * * *
午後。ダレンが休憩していると。
「ダレン・ベイクウェル。今日の掃除はもういいです」
「あ、はい。それで午後は何をすれば?」
「まずお嬢様へ紅茶をお持ちするように」
ジェームズは紅茶をダレンに手渡した。
「いいですか。この邸ではお嬢様を「最優先」にするように」
それだけ言ってジェームズは邸の奥へ消えていく。
ダレンは「ジェームズはロザリーと俺を合わす機会を作ったということだ」と理解した。昨日の様子を見る限り、ロザリーはダレンに会いたかったことは判明している。紅茶はダレンも知っているような、店に売られているようなものだ。それとチョコレートが一緒に用意されていた。
「こういうもの、どこで調達してくるのだろう?」
紅茶を持って、階段を登ってロザリーの部屋の前に立つ。
丁寧にノックして要件を伝える。
「ロザリーお嬢様。紅茶をお持ちしましたよ」
なんとなくぎこちない言葉になった。
すぐ扉が開いてロザリーが出てくる。
「ありがとう。ダレン。部屋に入って」
ダレンは促されるままロザリーの部屋の中に入る。
〈この部屋は女の子の部屋だ〉と感じた。カーテンの柄は花柄で、置かれている物や色が赤に近いピンクだったり西洋人形だったりと、男の持ち物でないものが多くある。そう感じるとダレンは少しそわそわしてしまう。年頃の女の子の部屋に入った男が、何となく感じる「あの落ち着かなさ」だった。
ロザリーはダレンを見ると嬉しそうな笑みを浮かべる。
「ダレン。少しお話しましょう?」
「ええ、ロザリーお嬢様」
「普通に話してもらって大丈夫よ」
「えっと。普通に、と言われても」
「ダレン。今のダレンは私をどのくらい知っている?」
「正直に言うとよく分かっていないかな。ロザリーのことも、邸も、ジェームズも。別に君のことを傷つけるつもりはないけれど、何か「この場で嘘を言って話を合わせる」のも違うんじゃないかって思っているよ」
ロザリーは「ありがとう」と微笑む。
「昨日の夜。ダレンと私は「まだ出会っていなかった」と思う。でも、昨日の夜、ダレンは私を気遣って話を合わせてくれたいたのね」
「ジェームズに「お嬢様を傷つけないように」と言われていて」
「ううん。言われていなくてもダレンは私に酷いことを言わなかったと思う。ダレンは優しくて、誰かの心を守れる心の持ち主だから」
ダレンはそんなに褒められると思っていなかった。
少しむず痒いような気持ちになる。
「でも、出会っていないのに、何故? 誰かから聞いた?」
「いいえ。ダレンから聞いたわ」
彼女は「ダレンのこと」を話していく。
生まれた年、町。学校での思い出や趣味、好きなもの。
ロザリーはダレンのことを「詳細に」覚えているようで、ダレンの情報に間違いもない。彼女がダレンを「別の誰かと間違えている」ということではなかった。
「ダレンから聞いたことは全部を覚えているわ」
ロザリーが話したダレンは、ほぼ合っていた。
ゆえに、ダレンの中で「いつ出会ったのか」という疑問が膨らんでいく。
ロザリーはダレンのことを話している時、本当に嬉しそうな表情を浮かべて話す。ダレンは不思議に思うと同時に惹かれていった。
「君のことを知りたいと思うよ。ロザリー」
「私もあなたのこともっと知りたいの。ダレン」
二人が見つめ合ったその時にノックの音がした。
『ダレン・ベイクウェル。今日の仕事はまだ終わっていません』
ジェームズのその言葉で「そろそろ行かなくちゃ」とダレンは部屋を出ていくことにした。ロザリーが微笑みながら手を振る。
「ええ、またお話しましょう。ダレン」
* * * * *
この邸ではジェームズの言ったように日中のみの仕事になる。
「結局、特に重要そうな仕事はなかった」
午後の4時半をすぎれば仕事は終わる。
今日一日を終えて、ダレンは自分の部屋で暮れゆく窓の外を見ていた。一台の白い車両が邸の外に見えた。
「誰だろうか? こんな邸に?」
じっと部屋の中から様子を窺った。
ジェームズが「男」から何やら荷物を受け取った。
「……なるほど。あの男に必要なものを届けてもらっているんだな。お金は、この邸のどこかにあっても不思議ではない。あるいは、邸の中の調度品はどれも高価そうだから、それらをお金に変えることも出来るだろう。あの男は、おそらく秘密を守れるのだろう。この邸とジェームズは「商売相手」というわけだ」
昨晩、ダレンはジェームズから水と食事をもらい、トイレと浴室の場所を教えてもらった。ジェームズは「食事は一日三食しっかり用意します」と言った。
ダレンはその言葉に半信半疑だった。
だが、今朝起きるとダレンの朝食が用意されていた。少し固いパンと、豆とトマトのスープ、それと干し肉と干し葡萄だった。ダレンは「もっとひどいもの」を想像していたが、食事は普通に食べられるものだった。ダレンも少し安堵した。
「まあ、食事と水と、時間かかるけれど風呂も入れる」
邸のインフラは思っていたよりは整っていて、ダレンの部屋には電気はないが、主要な場所には一応は電気も通っていた。水も、水道をひねれば手に入ることが分かった。ボイラー設備もある。この古い邸が、過去に栄えていた当時として、おそらく「最新鋭設備」を有していたと思われる。
ただ、2007年と比べて「旧時代」だった。
「まあ、ない物ねだりしても仕方ない」
ダレンは今はこの邸で生きていくことを考えることにした。
ダレンはジェームズの命令で邸の中の仕事を片付けていく。
「この邸で何もせずに過ごすことは、それはそれで退屈なんだろう。役割がある方がマシだ。彼女「ロザリー」の役に立っているとでも思えばいい。というか「使用人として働いてもらいます」と言ったが、この邸に特に仕事は必要ないんじゃないか?」
今日は「清掃しておくように」とだけジェームズに伝えられた。
それで清掃用具を持って、邸の中の掃除をしているが、邸の中は別に汚れているわけでもない。ただ言われたからにはきちんと掃除をしていく。
〈俺。家に連絡も出来ていないけれど大丈夫かな?〉
ダレンは「自分が居なくなったことで周囲は大変なことになっているのではないか?」と考えた。ダレンのその不安に、ジェームズは「こちらで上手くやるので気になさらず」と言ったが、それでも気になるのは当然のことだ。
それでもダレンはこの邸に留まる。
一つは、逃げ出そうとしても「どうせ逃げれないだろうな」と思ったこと。そしてもう一つの理由は、彼女「ロザリー」を知りたかった。
「彼女、どうして俺と会えたことで喜んだのだろう?」
* * * * *
午後。ダレンが休憩していると。
「ダレン・ベイクウェル。今日の掃除はもういいです」
「あ、はい。それで午後は何をすれば?」
「まずお嬢様へ紅茶をお持ちするように」
ジェームズは紅茶をダレンに手渡した。
「いいですか。この邸ではお嬢様を「最優先」にするように」
それだけ言ってジェームズは邸の奥へ消えていく。
ダレンは「ジェームズはロザリーと俺を合わす機会を作ったということだ」と理解した。昨日の様子を見る限り、ロザリーはダレンに会いたかったことは判明している。紅茶はダレンも知っているような、店に売られているようなものだ。それとチョコレートが一緒に用意されていた。
「こういうもの、どこで調達してくるのだろう?」
紅茶を持って、階段を登ってロザリーの部屋の前に立つ。
丁寧にノックして要件を伝える。
「ロザリーお嬢様。紅茶をお持ちしましたよ」
なんとなくぎこちない言葉になった。
すぐ扉が開いてロザリーが出てくる。
「ありがとう。ダレン。部屋に入って」
ダレンは促されるままロザリーの部屋の中に入る。
〈この部屋は女の子の部屋だ〉と感じた。カーテンの柄は花柄で、置かれている物や色が赤に近いピンクだったり西洋人形だったりと、男の持ち物でないものが多くある。そう感じるとダレンは少しそわそわしてしまう。年頃の女の子の部屋に入った男が、何となく感じる「あの落ち着かなさ」だった。
ロザリーはダレンを見ると嬉しそうな笑みを浮かべる。
「ダレン。少しお話しましょう?」
「ええ、ロザリーお嬢様」
「普通に話してもらって大丈夫よ」
「えっと。普通に、と言われても」
「ダレン。今のダレンは私をどのくらい知っている?」
「正直に言うとよく分かっていないかな。ロザリーのことも、邸も、ジェームズも。別に君のことを傷つけるつもりはないけれど、何か「この場で嘘を言って話を合わせる」のも違うんじゃないかって思っているよ」
ロザリーは「ありがとう」と微笑む。
「昨日の夜。ダレンと私は「まだ出会っていなかった」と思う。でも、昨日の夜、ダレンは私を気遣って話を合わせてくれたいたのね」
「ジェームズに「お嬢様を傷つけないように」と言われていて」
「ううん。言われていなくてもダレンは私に酷いことを言わなかったと思う。ダレンは優しくて、誰かの心を守れる心の持ち主だから」
ダレンはそんなに褒められると思っていなかった。
少しむず痒いような気持ちになる。
「でも、出会っていないのに、何故? 誰かから聞いた?」
「いいえ。ダレンから聞いたわ」
彼女は「ダレンのこと」を話していく。
生まれた年、町。学校での思い出や趣味、好きなもの。
ロザリーはダレンのことを「詳細に」覚えているようで、ダレンの情報に間違いもない。彼女がダレンを「別の誰かと間違えている」ということではなかった。
「ダレンから聞いたことは全部を覚えているわ」
ロザリーが話したダレンは、ほぼ合っていた。
ゆえに、ダレンの中で「いつ出会ったのか」という疑問が膨らんでいく。
ロザリーはダレンのことを話している時、本当に嬉しそうな表情を浮かべて話す。ダレンは不思議に思うと同時に惹かれていった。
「君のことを知りたいと思うよ。ロザリー」
「私もあなたのこともっと知りたいの。ダレン」
二人が見つめ合ったその時にノックの音がした。
『ダレン・ベイクウェル。今日の仕事はまだ終わっていません』
ジェームズのその言葉で「そろそろ行かなくちゃ」とダレンは部屋を出ていくことにした。ロザリーが微笑みながら手を振る。
「ええ、またお話しましょう。ダレン」
* * * * *
この邸ではジェームズの言ったように日中のみの仕事になる。
「結局、特に重要そうな仕事はなかった」
午後の4時半をすぎれば仕事は終わる。
今日一日を終えて、ダレンは自分の部屋で暮れゆく窓の外を見ていた。一台の白い車両が邸の外に見えた。
「誰だろうか? こんな邸に?」
じっと部屋の中から様子を窺った。
ジェームズが「男」から何やら荷物を受け取った。
「……なるほど。あの男に必要なものを届けてもらっているんだな。お金は、この邸のどこかにあっても不思議ではない。あるいは、邸の中の調度品はどれも高価そうだから、それらをお金に変えることも出来るだろう。あの男は、おそらく秘密を守れるのだろう。この邸とジェームズは「商売相手」というわけだ」

