目立たない総務の私ですが、ハイスペック副社長がジレ甘です

「こちらに置いておきます。内容をご確認いただけますでしょうか」

​鷹司は視線を画面から外し、書類を1通り手際よく改めると、受け取りのサインをサイン欄に走らせた。

その手つきはどこまでも事務的で、完璧な役員の顔だ。

​(……やっぱり、あの夜のことは総務部の私へのただの『気まぐれな配慮』だったのかな)

​胸の奥に小さな寂しさがかすめる。

真由が書類を受け取り、「では、失礼いたします」と深く1礼して踵を返そうとした、その時だった。

​「市川」

​真由は呼び止められ、足を止めて振り返った。

鷹司は万年筆をペン立てに戻すと、どこか呆れたような、けれどわずかに柔らかさを帯びた瞳で真由を見つめていた。

​「総務部のフロアは、冷房が効きすぎていないか」

​「……え?」
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真由は一瞬目を見開き、それから静かに鷹司の顔を見つめた。
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