目立たない総務の私ですが、ハイスペック副社長がジレ甘です

​「助手席は、君専用だ」

鷹司は​断る隙など最初から与える気がないかのように、微笑みを深め、優しく真由を立ち上がらせた。

ー◇ー◇ー◇ー

車内にワイパーが規則正しく雨を弾く音だけが響く。

赤信号で車を止めた時、鷹司はハンドルを握ったまま、真由の方を振り返らずに呟いた。

​「君はいつも残業で無理理をしているな。私が止めなければ、朝まであのオフィスに籠もる気だったか。……そういう無茶はしないでほしい」

​鷹司は真由が返策に詰まり、息を飲む気配を感じ取ると、わずかに口元を緩た。

何事もなかったように、青に変わった信号で車を走らせた。

​「……他意はない。優秀な部下に倒れられると、明日のスケジュール調整が面倒になるというだけだ」

​車内の空気はその言葉で、「上司と部下」の境界線へと引き戻された。

​真由は小さく胸を撫でおろした。