目立たない総務の私ですが、ハイスペック副社長がジレ甘です

真夏ならばクーラを着けなければ蒸し風呂のようだ。

真冬は床からの冷気で底冷えする。

だが、秋だ。

暑くもなく寒くもない。

残業でなければ、もっといいのにと思う。

役員人数分のコピーを終え、書類を纏める。

「……よし、これで明日の役員会議の資料は完璧」

​小さく息を吐き、デスクの上の冷めたお茶に手を伸ばした時——デスクに影が落ちた。

​「市川さん。またこんな時間まで?」

​低く甘い声が頭上に降ってきた。

顔を上げると、そこには社内中の女性社員の溜め息を一身に集める男、取締役副社長の鷹司蓮(たかつかされん)が真由を見おろしていた。

​名門企業の御曹司。

海外留学組で英語・フランス語をネイティブ並みに話し、モデル顔負けのスタイルと端正なルックス。

誰もが息をのむ「ハイスペック男子」の代名詞のような人物だ。