エリート学園の最上級王子は、地味な私を離さない。

静かだった。
さっきまでのざわめきが嘘みたいに遠い。

鳳城くんは扉を閉めると、私のほうへ向き直る。

「……泣いた」

「う……」

いきなり言われて、私は思わず頬を押さえた。

「泣いてない、ちょっとだけ……」

「ちょっとでも泣いた」

「だって、鳳城くんがあんなこと言うから……」

小さく抗議すると、彼は少しだけ目を細めた。

「じゃあ何て言えばよかった」

「それは……」

言葉に詰まる。
だって、あれ以上うれしい言葉なんて、たぶんない。

鳳城くんはゆっくり私に近づく。

一歩。
また一歩。

そのたびに鼓動が速くなる。

「ほのか」

名前を呼ばれただけで、胸がいっぱいになる。

「……うん」

「もう無理」

「え?」

「これ以上、言わないままは無理」

息が止まりそうになる。

鳳城くんの金色の瞳が、まっすぐ私を見つめていた。
逃げ道なんてない。
でも今は、逃げたくもない。

「最初は、ただ気になるだけだと思ってた」

低い声が、静かな夜に溶ける。

「放っておけないし、目で追うし、他のやつと話してるだけで苛立つし」

思わず少しだけ笑いそうになる。
でも、そんな余裕はすぐ消えた。

「気づいたら、毎日おまえのことばっか考えてた」

胸がぎゅっとなる。

「笑ってほしいし、隣にいたいし、守りたい」

やさしくて、まっすぐで、どうしようもなく甘い声。