エリート学園の最上級王子は、地味な私を離さない。

「ほのか」

「……うん」

「俺、おまえ以外見てた?」

その問いに、私は顔を上げる。

金色の瞳が、まっすぐ私だけを映していた。

「母親に無理やり呼ばれて、麗華が近くにいただけ」

「でも……」

「でもじゃない」

一歩、近づいてくる。

「おまえ、誰の言葉信じてるの」

その声が、少し痛い。
だって私はまた、不安に負けてしまったから。

「私は……」

「俺、おまえに何回言った?」

もう一歩。
壁際まで追いつめられて、逃げ場がない。

「俺が見てるのはおまえだって、何回言えば信じる」

その言葉に、胸がいっぱいになる。

「だって、怖かった……」

気づけば、声が震えていた。

「どうしても私なんかじゃだめなんじゃないかって、思っちゃったの……」

鳳城くんの表情が揺れる。
怒りが消えて、代わりに苦しそうな色がにじんだ。

「……ばか」

かすれたような声。

「そんなので泣きそうになるくらいなら、逃げる前に俺んとこ来いよ」

涙がこぼれそうになる。

「だって、邪魔したくなくて……」

「邪魔?」

鳳城くんが、信じられないものを見るみたいに眉を寄せた。

「おまえが?」

次の瞬間、ぐいっと腕を引かれる。
気づけば、彼の胸に閉じこめられていた。

「鳳城くん……っ」

「二度とそんなこと言うな」

抱きしめる力が強い。
苦しいくらいなのに、やさしい。

「おまえがいないほうが無理に決まってるだろ」

その一言で、涙がこぼれた。

もうだめだ。
好き。
本当に好き。

胸の奥に押しこんでいた気持ちが、全部あふれそうになる。

「鳳城くん……私……」

言いかけた、そのとき。

遠くから人の気配がして、鳳城くんがはっと顔を上げた。
でも腕は離れない。

「……続きはあと」

低くそう言って、彼は私の涙を親指でそっとぬぐう。

「泣いた顔、他のやつに見せたくない」

その声があまりにも甘くて、また泣きそうになる。

「戻れる?」

私は小さくうなずいた。

「……うん」

「今度は離れるな」

「うん」

「俺だけ見てろ」

その言葉に、今度こそちゃんとうなずけた。

会場へ戻る前。
鳳城くんは誰にも見えないように、そっと私の手を握る。

強くて、あたたかい手。
そのぬくもりに、もう迷いたくないと思った。