エリート学園の最上級王子は、地味な私を離さない。

誰かが笑いながら言う。

「まあ、本当にお似合い」
「まるで婚約者みたい」

その光景に、頭が真っ白になる。

わかってる。
ただ並んでいるだけかもしれない。
挨拶の流れかもしれない。

でも、さっきの言葉が全部よみがえってくる。

九重さんのほうがふさわしい。
私は場違い。
鳳城くんは優しいだけ。

気づいたときには、私はその場を離れていた。

「結城さん!」

後ろで麗華が呼ぶ声がした気がしたけれど、止まれなかった。

廊下の角を曲がったところで、強い力で腕を引かれる。

「どこ行く気」

息が止まる。
振り向くと、そこには鳳城くんがいた。

「鳳城くん……」

彼は明らかに怒っていた。
でも、その目の奥には焦りも見える。

「勝手にいなくなるな」

「ごめん……」

「謝る前に理由」

まっすぐ問い詰められて、私はうつむく。

「……見たくなかったの」

「何を」

「鳳城くんが、九重さんと並んでるところ」

言ってしまった瞬間、もう終わりだと思った。
こんなこと、重いって思われるかもしれない。

でも鳳城くんは、数秒黙ったあと、信じられないくらい低い声で言った。

「……それで逃げたの?」

私は何も言えない。
肯定みたいな沈黙だった。

次の瞬間、鳳城くんが深く息をつく。