エリート学園の最上級王子は、地味な私を離さない。

「……大丈夫」

小さくそうつぶやいた、ちょうどそのとき。
スマホが震える。

着いた。外

たったそれだけの短いメッセージなのに、胸がどくんと高鳴る。
私は急いで部屋を出た。

屋敷の前に停まっていた黒い車。
その横に立つ鳳城くんを見た瞬間、私は完全に言葉を失った。

黒を基調にしたフォーマルな装い。
整えられた金髪。
夜の空気の中で立つ姿は、ほんとうに王子様みたいだった。

そしてたぶん、向こうも同じだった。

私を見たまま、鳳城くんがしばらく動かない。

「……鳳城くん?」

おそるおそる呼ぶと、彼は小さく眉を寄せた。

「やっぱ無理」

「え?」

「帰したい」

「な、何それ!?」

意味がわからなくて慌てると、鳳城くんが近づいてくる。

「綺麗すぎる」

その一言で、顔が一気に熱くなった。

「……っ」

「ほんとに、他のやつに見せたくない」

低い声でそんなことを言うから、心臓がもたない。

「で、でも行かなきゃでしょ……」

「わかってる」

不満そうに言いながらも、彼は私の前で手を差し出した。

「乗れ」

私はその手をそっと取る。
大きくてあたたかい手。
触れただけで、少しだけ緊張がほどける。

会場に着くと、思った以上の人の多さに足がすくみそうになった。

広いホール。
きらびやかな照明。
上品に談笑する大人たち。
聞こえてくる会話の内容まで、全部が遠い世界のものみたいだ。