エリート学園の最上級王子は、地味な私を離さない。

「そこは嫌いではありませんわ」

意外な言葉に、私は目を丸くする。

「でも」

やっぱり続きがある。

「甘く考えないほうがよろしくてよ」

空気がすっと冷える。

「あなたが行く場所は、失敗をやさしく見逃してくれる世界ではありませんの」

胸がきゅっと縮む。
わかっていたつもりでも、改めて言われると痛い。

「少しの迷いも、慣れていない仕草も、全部見られますわ」

「……うん」

「カイルさまの隣に立つなら、なおさら」

その言葉に、私はぎゅっと手を握る。

怖い。
やっぱり怖い。

そんな私を見て、麗華は静かに続けた。

「それでも行くなら、せめて下を向かないことですわ」

「え……?」

「おどおどしている女の子を、あの人たちはいちばん軽く見ますの」

麗華の声は真剣だった。

「完璧でなくてもかまいません。でも、カイルさまの隣にいる自分を、あなたが信じていない顔をしたら終わりですわ」

その言葉が、胸の奥に深く落ちる。

自分を信じていない顔。
きっと私は、無意識に何度もしてしまっている。

「どうして、そんなこと教えてくれるの」

思わずそう聞くと、麗華は少しだけ寂しそうに笑った。

「負けるなら、ちゃんとした相手に負けたいからですわ」

その言葉に、胸がぎゅっとなる。

麗華は立ち上がった。

「それと、ひとつだけ忠告ですの」

「うん」

「今夜のカイルさまは、たぶんいつも以上に余裕がなくなりますわよ」

「え?」

「あなたのことになると、あの方は驚くほどわかりやすいもの」

そう言って、麗華はくすっと笑いながら去っていった。