エリート学園の最上級王子は、地味な私を離さない。

慈善晩餐会が近づくにつれて、私の緊張は日に日に大きくなっていった。

レッスンのおかげで、立ち居振る舞いは少しずつ形になってきた。
歩き方も、グラスの持ち方も、最初よりはずっとましになったと思う。

でも、それとこれとは別だ。

本番で失敗したらどうしよう。
鳳城くんの隣で恥をかかせたら。
お母様に、やっぱりだめだと思われたら。

考え始めると止まらなくなる。

その日の昼休み。
私は中庭のベンチで、ひとり深くため息をついた。

「そんな顔をしていたら、せっかくのお昼がもったいないですわよ」

やわらかな声に顔を上げると、そこに立っていたのは九重麗華だった。

「九重さん……」

彼女は今日も完璧だった。
制服の着こなしも、姿勢も、微笑みさえ絵みたいに綺麗だ。

「お隣、よろしいかしら」

断る間もなく、麗華は優雅に腰を下ろした。

私は少しだけ身を固くする。

「そんなに警戒なさらなくても、今日は意地悪を言いに来たわけではありませんの」

「……ほんとに?」

思わず聞き返すと、麗華はくすっと笑った。

「少なくとも、泣かせるつもりはありませんわ」

それ、前提がちょっと怖い。

麗華は前を向いたまま、小さく息をつく。

「慈善晩餐会、出るのでしょう?」

「うん」

「勇気がありますのね」

褒められているのか、試されているのか、やっぱりわからない。

「怖いですけど」

正直に言うと、麗華は少しだけ目を細めた。

「怖いのに出るのね」

「逃げたくないから」

そう答えると、彼女はほんの少しだけ口元をやわらげた。