エリート学園の最上級王子は、地味な私を離さない。

「……ほんとに強いな」

「鳳城くんがそうさせるんだよ」

ぽろっと本音が落ちる。

すると、鳳城くんが目を見開いた。
私も自分で何を言ったのか気づいて、一気に顔が熱くなる。

「ち、違……今のは、その……」

「違わないだろ」

低く言って、鳳城くんが少しだけ身を乗り出す。

ソファの上で距離が縮まる。
逃げられない。
でも、逃げたくない。

「ほのか」

「……うん」

「そういうこと、無防備に言うな」

「だって本当で……」

「だから困る」

困ると言いながら、彼の目は甘く熱い。
次の瞬間、額にこつんと彼の額が触れた。

「鳳城くん……」

「今、たぶんかなりぎりぎり」

心臓が止まりそうになる。

「レッスンの続き、できなくなる」

その言葉に、私はもう何も返せなかった。

しばらくそのまま、どちらも動けない。
静かな部屋に、時計の音だけが響く。

やがて鳳城くんは小さく息をついて、ゆっくり離れた。

「今日はここまで」

「えっ」

「このまま続けたらたぶんよくない」

前にも聞いたことのある台詞。
でも今は、その意味が前よりもっとわかってしまう。

「送る」

立ち上がる彼の背中を見ながら、私は熱い頬を押さえた。

慈善晩餐会まで、まだ少しある。
なのにもう、心のほうが先に限界になりそうだった。

そして私は知らない。
この甘いレッスンの裏で、九重麗華もまた静かに動き始めていることを。