エリート学園の最上級王子は、地味な私を離さない。

「へえ」

聞き慣れた低い声が、図書室の入口から落ちてきた。

振り返るまでもない。
鳳城くんだ。

「鳳城くん」

彼はまっすぐこちらへ歩いてくると、私の前で足を止めた。
それから中野先輩へ視線を向ける。

「またいる」

「それ、中野先輩に失礼だよ」

私が小声で注意すると、鳳城くんは不満そうに眉を寄せた。

「事実だろ」

中野先輩は苦笑する。

「ここ図書室なんだけど」

「だから何」

「怖いなあ」

全然怖がっていない口調で言うあたり、中野先輩はやっぱり強い。

私は二人の間でおろおろしながら、鳳城くんを見る。

「どうしたの?」

「迎え」

「え?」

「放課後、空けろって言っただろ」

そういえば昨日、確かにそんなことを言われた。
でも私は、もう少し先の話だと思っていた。

「今日から?」

「今日から」

即答だった。

中野先輩が面白そうに肩をすくめる。

「もしかして、晩餐会のレッスン?」

「だったら何」

「いや、ほんとに付きっきりなんだなって」

その言葉に、私の心臓がどくっと鳴る。
付きっきり。
そんな言い方をされると、妙に意識してしまう。

鳳城くんは私の鞄を当然みたいに持つと、そのまま歩き出した。

「行くぞ」

「え、ちょっと、まだ本が……」

「俺が持つ」

「そういう問題じゃなくて」

「五分で終わらせろ」

「無茶言わないで」

言い合いながらも、結局私は急いで作業を片づけることになった。

中野先輩は帰り際、小さく手を振る。

「がんばって、結城さん」

「はい……!」

その応援がありがたいのに、なぜか隣から冷たい空気がする。

図書室を出てから、私はそっと鳳城くんを見上げた。