エリート学園の最上級王子は、地味な私を離さない。

慈善晩餐会に出ると決めた翌日から、私はずっと落ち着かなかった。

立ち居振る舞い。
会話の仕方。
食事のマナー。
考えれば考えるほど、自分に足りないものばかり浮かんでくる。

昼休みも、放課後も、頭の中はそればかりだった。

「結城さん、今日ちょっと元気ない?」

図書委員の当番表を見ながら、中野先輩が心配そうにのぞきこんでくる。

「えっ、そんなことないです」

「いや、あるでしょ。顔に出てる」

やっぱりわかりやすいんだ。
私はごまかすように小さく笑った。

「ちょっと考えごとしてただけです」

「鳳城のこと?」

不意に名前を出されて、私は思いきりむせそうになった。

「な、中野先輩……!」

「図星か」

楽しそうに笑われてしまって、顔が熱い。

「まあ、あいつが相手だと大変そうだもんね」

「大変っていうか……」

「振り回されてる?」

「……たまに」

そう答えると、中野先輩はやさしく笑った。

「でも結城さん、前よりちゃんと強くなったよ」

その言葉に、私は少しだけ目を丸くする。

「そうですか?」

「うん。前は不安になるとすぐ俯いてたけど、今はちゃんと前見ようとしてる」

思いがけない言葉に、胸の奥がふわっとあたたかくなった。

「ありがとうございます」

「どういたしまして」

中野先輩はそう言って、返却棚へ本を戻していく。
その穏やかな空気に少しだけほっとした、そのとき。