エリート学園の最上級王子は、地味な私を離さない。

「今度は何」

「え?」

「不安の原因」

この人は本当に、すぐ見抜く。

私は少し迷ってから、小さく答えた。

「……お母さん」

鳳城くんの目がわずかに細くなる。

「あの夜、窓のところにいた人」

「ああ」

短い返事。
否定しないということは、やっぱりそうなんだ。

「どんな人なのかなって……」

そう言いながら、胸が少し苦しくなる。
お父さんだけじゃない。
お母さんまで私を認めないなら、きっともっと大変だ。

鳳城くんは少し黙ってから、珍しくゆっくり言葉を選ぶように口を開いた。

「母親は、親父ほど露骨じゃない」

「じゃあ、やさしいの?」

「……どうだろうな」

曖昧な言い方に、私は不安になって彼を見る。

「昔から、家にとって正しいものを選ぶ人だから」

その一言で、なんとなくわかってしまった。

やさしいかどうかじゃない。
鳳城家にとって、何が一番ふさわしいか。
それを基準に動く人なんだ。

「麗華さん、なのかな」

思わず口にした瞬間、鳳城くんの空気が少しだけ変わる。

「……何でそうなる」

「だって、幼なじみで、家同士のつながりもあって、お母さんから見ても安心で……」

自分で言っていて、どんどん苦しくなる。

すると鳳城くんが、不機嫌そうに眉を寄せた。

「また始まった」

「え?」

「勝手に納得して勝手にへこむやつ」

言い返せない。
だって半分はその通りだ。

鳳城くんは私の額を軽く指で押した。

「母親が誰を気に入ってようが関係ない」

「でも」

「俺が選ぶ」

まっすぐな声だった。

胸がどくんと鳴る。

「今さら、そこだけ他人に決めさせると思う?」

その言葉がうれしいのに、同時にこわい。
鳳城くんが私を選ぶほど、家とぶつかることになるから。