エリート学園の最上級王子は、地味な私を離さない。

入学式から三日。
私立星蘭学園の空気にも、ほんの少しだけ慣れてきたころ。

私は朝から、自分の席でノートを広げていた。

来週の実力確認テスト。
この学園で、自分の力を示せる最初の機会だ。

家柄でも、お金でも勝てない。
だからこそ、点数だけは負けたくない。

私は教科書の端に小さく要点を書きこみながら、ぶつぶつと公式を確認する。

すると、ふいに影が落ちた。

「結城さんって、もうそこまで進めてるの?」

顔を上げると、同じクラスの男子が立っていた。
たしか、朝比奈くん。
明るくて話しやすそうな人で、入学してから何度かクラスの中心で笑っているのを見かけている。

「えっ。あ、うん……少しだけ」

「すごいな。よかったら、そこ教えてもらえない?」

「私でよければ……!」

勉強のことなら力になりたい。
そう思ってノートを開き直すと、朝比奈くんは私の隣の机に身を寄せた。

「ここ、先生が言ってた意味がいまいちわかんなくてさ」

「あ、ここはね、この式を先に見るとわかりやすいよ」

私はノートに指を置きながら説明する。
朝比奈くんは何度もうなずいて、素直に聞いてくれた。

「なるほど。結城さん、教えるの上手い」

「そ、そんなことないよ」

「いや、ほんとに。助かった。ありがとう」

にこっと笑われて、私は少し照れてしまう。
人の役に立てるのは、やっぱり嬉しい。

そのときだった。

「へえ。ずいぶん楽しそうじゃん」

聞き慣れた低い声に、肩がびくっと跳ねた。

振り向かなくてもわかる。
この意地悪そうな声の持ち主は、ひとりしかいない。