エリート学園の最上級王子は、地味な私を離さない。

開会の挨拶が終わっても、私の心は全然落ち着かなかった。

鳳城くんの言葉。
あとで抜けるぞ。二人で話したい。

そのひと言がずっと胸の中で響いている。
何を話すつもりなんだろう。
さっきの近さも、手をつないだまま離してくれなかったことも、全部が甘すぎて苦しい。

それに。
会場の奥でこちらを見ていた九重麗華の視線も気になって仕方なかった。

「ぼーっとしてる」

低い声が耳元に落ちて、私はびくっと肩を揺らした。

「鳳城くん……」

気づけばすぐ隣に彼が立っていた。
会場の光を受けた横顔は、やっぱりずるいくらい綺麗だ。

「行くぞ」

「え、もう?」

「今じゃないと人増える」

そう言うと、鳳城くんは当然みたいに私の手を取った。

会場のざわめきをすり抜けて、大広間の脇にあるテラスへ出る。
そこから続く石畳の先には、夜の庭園が静かに広がっていた。