エリート学園の最上級王子は、地味な私を離さない。

「……もう」

「何」

「強引すぎるよ」

私が小声で抗議すると、鳳城くんは悪びれもせずに言った。

「だって、あいつがおまえ見てた」

「見るくらいするでしょ」

「それが嫌」

即答だった。

あまりにまっすぐで、私は言葉を失う。

会場のざわめきの中。
シャンデリアの光を浴びながら、鳳城くんは少しだけ身をかがめる。

「今日は、ほんとにだめ」

「な、何が……」

「おまえ、かわいすぎて無理」

またそんなこと言う。
胸が苦しくて、どうしたらいいかわからない。

そのとき、壇上から開会の挨拶が始まり、会場の照明が少し落ちた。
周囲の注目が前へ向く中、鳳城くんは私の手を離さないまま、そっと耳元で言う。

「ほのか」

「……っ」

「あとで抜けるぞ」

「え?」

「二人で話したい」

低いその声に、心臓が大きく跳ねる。

何を言われるんだろう。
何を話すつもりなんだろう。
期待と不安が一緒になって、胸の中で甘く騒ぐ。

だけど。
その夜の終わりに待っていたのは、甘い時間だけじゃなかった。

会場の奥で、グラスを片手にこちらを見ていた九重麗華が、静かに微笑んでいたからだ。

その笑顔は綺麗なのに、どこか不穏で。
胸の奥が、また少しだけざわついた。