エリート学園の最上級王子は、地味な私を離さない。

まずはクラス発表を見つけなくちゃ。

人の流れに押されるようにして掲示板へ向かうと、そこにはすでにたくさんの新入生が集まっていた。
背伸びしながら自分の名前を探す。

「えっと……ゆ、結城……あ、あった」

一年A組。
学園でも特に成績優秀者が集まるクラスだと、入学案内に書いてあった。

ほっとしたのも束の間、すぐ隣から聞き慣れた声がした。

「へえ。おまえ、A組なんだ」

びくっとして振り向くと、そこにはさっきと同じ、きらきらしすぎる顔。

「鳳城くん……!」

「その反応、失礼すぎ」

「だって急にいるから……!」

「俺もA組」

さらっと告げられた言葉に、私は目を見開いた。

同じクラス。
つまり、これから毎日会うってこと。

一気にくらくらしてしまう。
こんな人と同じ空間で学校生活なんて、心臓がもつ気がしない。

「安心しろよ」

「……何がですか」

「おまえが置いてかれないように、少しくらい見ててやる」

「それ、全然安心できません……」

私がそう言うと、カイルくんは楽しそうに笑った。

本当に、感じが悪い。
なのにその笑顔が綺麗すぎて、余計に悔しい。

教室へ向かう途中も、まわりの視線はずっとカイルくんに集まっていた。
当然だ。
こんなに目立つ人、見ないほうが難しい。

けれど、ちらちらと私まで見られている気がして、居心地が悪くなる。

やっぱり住む世界が違う。
私は私。
ちゃんと勉強して、余計なことは気にせず、ここで頑張ればいい。

そう思って教室に入った瞬間、担任の先生がにこやかに口を開いた。

「入学早々ですが、来週には実力確認テストがあります。このクラスは特に上位争いが激しいので、気を引き締めてくださいね」

その一言で、教室の空気がぴんと変わる。

私は思わず姿勢を正した。
実力確認テスト。

この学園で、自分の力を示せる最初のチャンスだ。

家柄もお金も関係ない。
点数だけで評価されるなら、私は絶対に負けたくない。

そう心の中で燃えていたら、隣の席から視線を感じた。

「やる気満々って顔してる」

「……してません」

「してる。わかりやすい」

見れば、カイルくんが頬杖をつきながらこちらを見ていた。

「言っとくけど、A組で一番になるのは簡単じゃない」

「わかってます」

「それでも狙うんだ」

試すみたいな目。
意地悪そうに細められた瞳。

だけど私は、まっすぐその視線を見返した。

「はい。狙います」

教室が一瞬、静かになった気がした。
何人かがこちらを見るのがわかる。

でも、もう引っ込めない。
ここで頑張るって決めたから。

するとカイルくんは少しだけ目を見開いて、すぐにふっと笑った。

「……ほんと、面白い」

「またそれですか」

「気に入った。おまえ、たぶん思ってるよりずっと負けず嫌いだろ」

「普通です」

「全然普通じゃない」

そう言って、彼はほんの少しだけやさしい顔をした。

その表情に、また胸が変に鳴る。
意地悪で、勝手で、よくわからない。
なのに、なぜか目が離せない。

きっとこのときの私は、まだ知らなかった。

この学園で一番まぶしい最上級王子が、
これから何度も私の毎日をかき乱してくること。

そして、勉強だけを頼りに進もうとしていた私の世界が、
鳳城カイルに出会ったことで、少しずつ変わっていくことを。