エリート学園の最上級王子は、地味な私を離さない。

九重麗華が学園に現れた翌日。
私は朝から、鳳城くんの顔をまともに見られなかった。

婚約者候補。
昨日、昇降口で聞こえてきたその言葉が、ずっと頭から離れない。

家柄も容姿も、何もかも完璧なお嬢さま。
鳳城くんの隣に並んでも、少しも不自然じゃない人。

それに比べて私は。
成績特待で入っただけの、普通の家の普通の女の子だ。

……考えたって仕方ないのに。
そう思うほど、胸の奥が苦しくなる。

「おはよう」

不意に落ちてきた低い声に、肩がびくっと跳ねた。

顔を上げると、鳳城くんがすぐ隣に立っている。
今日も眩しいくらい整った顔。
でも、その顔を見るだけで昨日の光景まで浮かんできて、私はあわてて視線をそらした。

「お、おはよう……」

自分でもわかるくらいぎこちない。
鳳城くんは少し眉をひそめた。

「なに、その反応」

「え?」

「避けてる?」

「そ、そんなことないよ」

即答したけれど、たぶん全然隠せていない。
鳳城くんの目が、じっと私を見つめてくる。

「ふーん」

短いその声が、妙にこわい。

私は逃げるように席へ座って、あわててノートを広げた。
けれど文字なんて全然頭に入ってこない。

その日一日、私は意識して鳳城くんと距離を取ってしまった。