エリート学園の最上級王子は、地味な私を離さない。

手が小さく震えた。

「すご……」
「特待生の子だよね?」
「鳳城さまの次って、本気でやばくない?」

まわりからひそひそと声が聞こえてくる。
でも今は、何も頭に入ってこなかった。

嬉しい。
でも、それと同じくらい悔しい。

一位には届かなかった。
あと少しで届きそうで、届かなかった。

そんなふうに立ち尽くしていた私のすぐ後ろから、低い声がした。

「その顔、満足してないな」

振り向くと、鳳城くんが立っていた。
順位表の一位よりも、ずっと近くでまぶしい金色が揺れる。

「鳳城くん……」

「二位。入学早々にしては十分すごいじゃん」

「……でも、一位じゃない」

私がそう言うと、鳳城くんは一瞬だけ目を見開いて、それから楽しそうに笑った。

「へえ。そこ悔しがるんだ」

「だって、狙うって決めてたから」

「本気で俺を引きずり下ろす気?」

からかうみたいな声。
なのに、その目は少しも笑っていなかった。
試すみたいに、まっすぐ私を見ている。

だから私も、逃げずに見返す。

「うん。次は負けない」

言った瞬間、まわりの空気がざわついた。

「えっ、結城さんすご……」
「鳳城さま相手に本気で言ってる……」

けれど鳳城くんは、そのざわめきなんて気にした様子もなく、ふっと口元をゆるめた。

「いいじゃん」

「え?」

「そういうの、嫌いじゃない」

そのまま彼は、ぽんと私の頭に手をのせる。
優しく、でも当然みたいに。

「よくやった」

たったそれだけなのに、胸の奥がじんわり熱くなる。
褒められた嬉しさと、触れられた驚きで、息が止まりそうだった。

しかも、まわりにはまだたくさん人がいる。
その視線が一気に私たちへ集まる。

「ほ、鳳城くん……!」
「なに」
「み、みんな見てる……!」

すると彼は、少しだけ身をかがめて、私にだけ聞こえる声で言った。

「見せつけてるんだけど」

「ええっ!?」

思わず顔が熱くなる。
何それ。
そんなこと、さらっと言うなんてずるい。

「おまえが頑張ってたの、俺は知ってる」

低く落ちる声が、まっすぐ胸に届く。

「だから二位でも十分すごい。けど」

鳳城くんはそこで少しだけ笑った。

「悔しいなら、次で来いよ」

その言葉に、胸の奥で何かが強く灯る。

悔しい。
でも、もっと頑張れる。
そう思えたのは、きっと彼がちゃんと見ていてくれたから。

「……うん」

小さくうなずくと、鳳城くんは満足そうに目を細めた。

「じゃあ、次も俺の隣に来い」

「隣……?」

「一位の隣。二位の席、もうおまえのもんだろ」

その言い方が、悔しいのに少し嬉しい。

まだ届かない。
でも、届きたい。

この学園の頂点に立つ最上級王子の隣に、ただ並ぶだけじゃなくて。
いつか本当に追いついて、追い越したい。

そう強く思った。

けれど同時に、私はまだ知らなかった。
この結果のせいで、学園中の視線が私に集まり始めることを。
そしてそれが、鳳城カイルとの距離をもっと大きく変えていくことを。