エリート学園の最上級王子は、地味な私を離さない。

「でもたぶん、それだけじゃない」

鳳城くんが、そっと私の頬に触れる。

「触れたいし、離したくないし、誰にも渡したくない」

その熱に、息が震える。

「おまえが不安そうな顔するたび苦しいし、泣きそうになると頭おかしくなるくらい焦る」

そんなふうに思ってくれていたなんて、知らなかった。

「ほのか」

彼の親指が、私の頬をやさしく撫でる。

「好きだ」

ついに落ちたその一言に、世界が止まる。

「世界でいちばん、君が好き」

涙があふれた。
止めようとしても無理だった。

ずっと聞きたかった言葉。
夢みたいで、苦しくて、うれしくて、胸がいっぱいになる。

「……泣くなよ」

困ったみたいに言いながら、鳳城くんの声はすごくやさしい。

「だって……」

「俺まで変になる」

そう言って、彼は少しだけ額を寄せた。

近い。
あたたかい。
でも今はもう、怖くない。

私は震える声で、やっと言葉を返す。

「私も……好き」

鳳城くんの瞳が揺れる。

「ずっと、好きだったの」

言った瞬間、また涙がこぼれた。

「鳳城くんが守ってくれるたびに、やさしくしてくれるたびに、どんどん好きになって……」

もう隠せない。
隠したくもない。

「遠い人だって思っても、諦められなかった」

すると鳳城くんが、苦しそうなくらいやわらかく笑った。

「諦めなくてよかった」

その言葉に、胸が熱くなる。

「ほのか」

「うん」

「もう一回言って」

「え……」

「ちゃんと聞きたい」

そんなの、恥ずかしすぎる。
でも、彼の目があまりにもまっすぐで、逃げられない。

私は涙で少し濡れたままの声で、でも今度はちゃんとはっきり言った。

「好きです」

次の瞬間、鳳城くんの腕が私を抱きしめる。

さっきよりもずっと深く、甘く、やさしい抱擁だった。

「……やばい」

耳元で落ちた声に、心臓が跳ねる。

「嬉しすぎて、今すぐ連れて帰りたい」

「だ、だめ……」

「知ってる」

知ってるのに言うのが、鳳城くんらしい。

しばらくそのまま抱きしめられて、私は彼の胸元に顔をうずめた。
鼓動が聞こえる。
速い。
たぶん、私と同じくらい。

「ねえ、鳳城くん」

「何」

「もう、逃げなくていい?」

抱きしめられたままそう聞くと、彼はすぐに答えた。

「最初から逃がす気ない」

思わず笑ってしまう。

「強引」

「今さら」

確かにそうだ。
でも、その強引さに何度も救われた。

鳳城くんは少しだけ体を離して、私を見つめる。

「これから先、家のことも、周りのことも、たぶん面倒なのは変わらない」

「うん」

「それでも、隣にいて」

迷う理由なんて、もうどこにもなかった。

「いたい」

そう答えると、鳳城くんがふっと笑う。

その笑顔は、今まで見たどんな顔よりやわらかかった。

「じゃあ決まり」

「うん」

しばらく見つめ合ったまま、どちらも動かなかった。
夜風が頬を撫でる。
遠くの音が、ひどく小さく聞こえる。

鳳城くんの指先が、そっと私の頬に触れた。
泣いたあとをなぞるみたいに、やさしく。

「……キスしていい?」

低く落ちたそのひと言に、胸がぎゅっとなる。

恥ずかしい。
でも、嫌じゃない。
むしろ、その先を少しだけ待っている自分がいた。

私は真っ赤になりながら、小さくうなずく。

「……うん」

その返事を聞いた鳳城くんが、少しだけ息をのんだ気がした。

そして次の瞬間、彼の手が私の後ろ髪に触れる。
逃げないようにではなく、安心させるみたいにやさしく支えられる。

ゆっくり、ゆっくり距離が縮まる。

長いまつげ。
きれいな瞳。
近づく体温。

目を閉じた瞬間、唇にやわらかな熱が重なった。

甘くて、あたたかくて、胸がいっぱいになる。
触れたのはほんの数秒なのに、永遠みたいに長く感じた。

離れたあとも、私はすぐに目を開けられなかった。
心臓がうるさすぎて、息の仕方までわからなくなる。

「……かわいすぎ」

かすれた声が聞こえて、さらに顔が熱くなる。

「い、今のなし……」

「無理」

即答だった。

私はそっと目を開ける。
すると鳳城くんは、いつもの余裕なんてどこかへ消えたみたいな顔で私を見ていた。

その表情に、胸がまた甘く痛くなる。

「ほのか」

「……うん」

「もう一回したい」

「えっ」

思わず目を丸くすると、鳳城くんが少しだけ困ったように笑う。

「そんな顔するなよ。さすがに我慢する」

その言い方がずるくて、私はますます何も言えなくなる。

でも次の瞬間、気づけば私は制服のときみたいに彼の袖をきゅっとつかんでいた。

鳳城くんが目を見開く。