動物しか友達のいなかったわたしが、イケメン獣医小学生に溺愛されちゃう!?

「ゲンちゃん、おはよう!」

 わたしが声をかけたのは人間ではない。茶色と白色の毛をしたノラネコだ。通学路でじっと小学生たちを見ている。この辺りのボス猫。わたしには動物と話せるという不思議な才能があった。

「おう、ひばりちゃんも元気かいな? ワイは今日も元気やで。ワイは日課の小学生の見守りや」

 ゲンちゃんはあれで小学生を見守っているつもりらしい。でも、赤信号で渡ろうとする1年生のズボンを引っ張って助けたりする賢い猫として近所では有名だった。今は地域猫として、近所のおばさんたちに餌をもらいながら生活している。

「おほほほほほっ! ひばりさんたら、また動物とお話ししているのね」

 クラスの一軍女子、キラキラで可愛いふわふわの髪にピンク色のリボンがついたお洋服を着たいおりちゃんがわたしを馬鹿にしてきた。

「小鳥遊(たかなし)さんは人間の友達がいないからね……」

 いおりちゃんの取り巻き女子たちまでわたしのことをバカにする。

「何を言うてんねん! このアホっ! ひばりちゃんはとってもエエ子やでっ!」

 ゲンちゃんがかばってくれるけれど、わたし以外の人にはゲンちゃんがみゃーみゃー鳴いているようにしか聞こえなかった。

「それにしても、今日の転校生はすごいイケメンらしいですよ。イギリスからの転校生だとか!」

「うん、5年1組のまいちゃんがたまたま見たって言ってた。顔立ちが整っていて、色白で、アイドルみたいな男の子なんだってさ。噂ではすごく頭も良いみたい」

「また、わたくしがモテちゃいますわねっ! おほほほほほほほほっ!!!!!」

 いおりちゃんは前向きですごいなぁ。そういうところは見習いたい。わたしは自分に自信がない。成績も外見もふつう。良くも悪くも何の取り柄もないのがわたしなのだ。ましてや、恋愛なんて今まで生きてきて一度も縁がない。告白をされたことももちろんなかった。バレンタインデーにチョコレートを渡す相手も当然いない。

「それじゃ、ゲンちゃん。学校へ行ってくるね」

 信号が青に変わると、わたしは横断歩道を歩いてさくら小学校へ向かった。教室の中は転校生の話題で持ちきり。飼育係のわたしはハムスターのハムちゃんと金魚のニシキちゃんに餌をあげてから着席する。わたしの通うさくら小学校では動物を飼育することが子どもの教育に良いとして、積極的に取り入れられていた。だから、自然豊かなさくら小学校にはニワトリやらウサギやら、いろんな動物たちがいる。

「おお、みんな! おはよう! 今日はとっておきの話があるぞ! なんと転校生がやってきたんだ! しかもイギリスから。みんなはイギリスってどこにある国か知っているか? 授業でやったから覚えているよな! ヨーロッパにある国だ!」

 元気いっぱいな担任の先生は渋谷(しぶや)わたる先生。東京の大学を卒業した後に地元のさくら小学校の先生になった若いスポーツマンタイプで、男子からも女子からも人気がある。

「おーい、はいってこい!」

 席に座ったクラスのみんながごくりと唾を飲み込む音が聞こえた。緊張の一瞬だ。なんだか、わたしまで緊張してしまう。

「よろしくお願いします」

 現れたのは日本人と外国人のハーフらしい、高い鼻と大きな瞳をした男の子だった。確かにアイドルみたいな男の子だ。

「きゃーっ! かっこいいっ!!」
「めちゃくちゃイケメンじゃないっ!」

 女子からはかなりの歓迎。黄色い声が響いた。

「一条(いちじょう)ひびきといいます。イギリスでは獣医師をやっていました。飛び級をしていたので。まだまだ勉強したいことがたくさんあるから、日本でも動物のことをたくさん学びたいと思っています」

 小学生で獣医さん!? 獣医師って、犬や猫の治療をする人だよね。ものすごく頭が良いんだな。自分とは違う世界の人みたい、わたしはそんなことを考えながら一条くんを見つめていた。