『飛鳥の皇子は、私の“残業”を許さない』


1.海外拠点からの無茶振り


「隋の使者は、自分たちの国の最新の『度量衡(どりょうこう:長さや重さの基準)』で図面を引いて寄越した。だが、我が国の織物職人たちは、昔ながらの倭国(日本)の古い物差しで計算している。……基準(プラットフォーム)が統一されていないのだから、計算がバグるのは当然だろう?」

皇子は愛用の扇をパタパタと動かしながら、さも当然のように言った。


「だったら、皇子がさっさと基準を統一する法律でも作ってくださいよ! 仕様のローカライズが追いついてないんです。おまけに、現場の渡来人系エンジニア(職人)のリーダーである『秦(はた)のタクマ』さんが、へそを曲げて『計算は絶対に合っている。これ以上、納期を縮めるなら俺たちは仕事をボイコットする』って、作業をストップさせちゃいました」


「やれやれ、これだから凡人は。感情を仕事に持ち込むなとあれほど言っているのに」

皇子は鼻の頭を指先で擦り、ため息をついた。

「タクマをここに呼べ。僕の耳で、彼の計算のどこに『バグ』があるのか、直接聞き分けてやる」