氷の君に、恋の歌を。

校門を出るころには、空はもう薄暗くなっていた。
今日は手をつなぐ余裕もない。
乃愛は蓮斗の腕を支えながら、ゆっくり歩く。

「重くないか」

「全然」

本当は少しどきどきしていた。
こんなに近くで支えるのも、蓮斗がこんなふうに頼ってくれるのも初めてだから。

「蓮斗くん、いつも無理しすぎ」

「乃愛に言われたくない」

「私は大丈夫だもん」

「大丈夫じゃないときもある」

弱っているのに、そんなふうに返してくるところが蓮斗らしい。
乃愛は少しだけ笑って、それからやわらかく言った。

「じゃあ、おあいこだね」

「……おあいこ?」

「私が不安なときは蓮斗くんがいてくれる。だから今日は、私がいるの」

その言葉に、蓮斗がふっと黙る。

「乃愛」

「なに?」

「そういうとこ、ほんとにずるい」

「えっ」

「弱ってるときに言われると、余計に離したくなくなる」

熱のせいで少し低くにじんだ声。
それでも甘いのがずるい。