氷の君に、恋の歌を。

放課後。
チャイムが鳴ってみんなが帰り支度を始めても、蓮斗は机に伏せたままだった。

「蓮斗くん」

肩にそっと触れると、彼はゆっくり顔を上げる。
やっぱり熱っぽい。
目元が少し赤い。

「帰れる?」

「……帰る」

言いながら立ち上がろうとしたその瞬間、蓮斗の体が少しふらついた。

「危ない!」

乃愛はあわてて腕を支える。
思ったより体重がかかってきて、胸がぎゅっと痛くなった。

「ほら、全然平気じゃない……!」

「ごめん」

弱った声でそんなふうに言われたら、怒ることなんてできない。

「今日は私が送る」

「いや」

「いやじゃない」

きっぱり言い返すと、蓮斗が少しだけ目を見開く。

「今は私の言うこと聞いて」

乃愛の声は震えていた。
でも逃げなかった。
いつも守ってくれる人が苦しそうにしているのに、見ているだけなんてできないから。

蓮斗はしばらく乃愛を見つめたあと、観念したみたいに小さく息をついた。

「……わかった」