氷の君に、恋の歌を。

中庭での歌のあとから、乃愛はますます学校で注目されるようになった。
それでも蓮斗は変わらず隣にいて、少し嫉妬しながらも、ちゃんと乃愛を支えてくれていた。

けれど、その週の終わり。
乃愛は隣の席の蓮斗を見て、小さく眉を寄せた。

「蓮斗くん、大丈夫?」

「……何が」

いつもの低い声。
でも少しかすれている。

「なんか、顔色悪い」

そう言われた蓮斗は、ほんの少しだけ視線をそらした。

「平気」

短い返事。
けれど乃愛にはわかった。
平気なふりをしているだけだと。

今日は朝から様子がおかしかった。
授業中もぼんやりしている時間があったし、咳も何度かしていた。
それなのに、本人は全然認めようとしない。

「絶対、平気じゃないよ」

乃愛が小さく言うと、蓮斗は困ったみたいに息をついた。

「……少し寝れば治る」

「それ、治らない人の言い方だよ」

思わず返すと、蓮斗はわずかに口元をゆるめた。
でもその笑い方も、いつもより力がない。