氷の君に、恋の歌を。

「……もしかして、また嫉妬してる?」

お弁当を開きながら小さく聞くと、蓮斗は少しだけ目を細めた。

「してる」

やっぱり即答だった。

「だって、朝からずっと乃愛の周りに人がいる」

「それは昨日の歌のせいだよ」

「わかってる」

「じゃあ仕方ないでしょ?」

そう言って笑うと、蓮斗はじっと乃愛を見る。

「仕方なくても、嫌なものは嫌だ」

低く落ちたその声が、思った以上に甘くて、乃愛の心臓が跳ねる。

「……そんなに?」

「かなり」

「蓮斗くんってほんとに独占欲強いね」

「乃愛にだけな」

さらっと言われて、乃愛は言葉を失う。
こういうときだけ、本当にずるい。

蓮斗は少しかがんで、乃愛にしか聞こえない声で続けた。

「みんながおまえの才能に気づくのはうれしい」

「うん」

「でも、それでおまえが遠くなるのは嫌だ」

その本音に、胸の奥がきゅっとなる。

乃愛はそっと箸を置いて、小さく笑った。

「遠くならないよ」

「……ほんとか」

「ほんと」

そう言って、机の下でこっそり蓮斗の指に自分の指を触れさせる。
誰にも見えない、小さな触れ合い。

それだけで蓮斗の表情がわずかにやわらいだ。