氷の君に、恋の歌を。

教室に入っても、今日はやっぱり落ち着かなかった。
乃愛に話しかけに来る生徒がいつもより多いのだ。

「森下さん、昨日ほんとすごかった!」
「また歌ってよ!」

悪意なんてひとつもない。
むしろうれしい言葉ばかり。
けれど、そのたびに蓮斗の視線が静かに刺さるのを、乃愛はちゃんと感じていた。

昼休み。
乃愛が友達に囲まれていると、蓮斗が無言で近づいてくる。

「乃愛」

名前を呼ばれただけで、周りが少しざわつく。
最近はもう、ふたりが恋人同士だとみんな知っている。
だからこそ、その一言の破壊力がすごかった。

「な、なに?」

「昼、一緒に食べる」

「え、でも今……」

友達のほうを見ると、みんなにやにやしている。
完全に察している顔だった。

「行っておいでよ、乃愛ちゃん」
「一宮くん、独占したいんだって」

その言葉に、蓮斗は否定しなかった。
むしろ乃愛の手首をそっとつかんで、そのまま自分の席のほうへ引く。

「ちょ、蓮斗くん……!」

「来い」

強引すぎないのに逆らえない。
乃愛は真っ赤になりながら、結局そのまま蓮斗の隣に座らされた。